アジアをつなぐ宗室の姿にこそ、魅力あり!
「今の日本に必要な物語だと思います」
――最後に言いたいことは?
廣畑 この本で語られるのは、日本だけではなく朝鮮や中国(明)、琉球、呂宋(ルソン)や寧波(ニンポー)など、アジア全体に広がる話。当時の商人は国境を越えてダイナミックなスケールで活動していたんです。ですから、最終選考時、選考委員の先生方が「この小説を読むと朝鮮をはじめアジアが好きになれる」と評価してくださったのが嬉しかったです。
いまもこれからも、日本ではアジア各国とどう付き合っていくかは大きなテーマです。韓国との関係ひとつとっても簡単ではありません。でも、戦国時代の日本の商人がアジア全体のことを考え、国を越えて橋渡しの役割を担おうとしていた。この話を、いま伝えられるのはとても幸せだと思いました。
――そこが歴史小説であり、経済小説にもなっている魅力。
廣畑 はい。最終選考会のときに幸田真音氏が「歴史経済小説」と言ってくださったのが、ずっと編集している間に頭に残っていました。経済小説と歴史小説の両方の裾野を広げる、そんな作品を世に出すお手伝いができたのは、自分にとって光栄なことでした。
そして、島井宗室自身の魅力も忘れてはなりません。圧倒的な武力を前にしても「商人の信念」を貫き通そうと奔走する宗室の姿は、いまのビジネスパーソンにとってもすごく示唆に富むと思います。
普段のビジネス書とは違うので不慣れな仕事だったとは思いますが、やりきった充実感が十分に感じられる話でした。歴史が好きな編集者が、まさかこんな作品にダイヤモンド社でめぐり合えるとは思っていなかったのでは? この本の刊行からダイヤモンド社のラインナップも変わるかもしれません。
次週は、もう一方の第3回城山三郎経済小説大賞受賞作『黄土の疾風』の製作秘話を、担当編集の佐藤に語ってもらいます。
【書籍のご案内】
『銭の弾もて秀吉を撃て ――海商 島井宗室』
安土敏氏、幸田真音氏激賞!
第3回城山三郎経済小説大賞受賞作、満を持して登場。
「商」の力で「武」の秀吉に抗った男、島井宗室。
戦国時代に翻弄されたひとりの商人、その数奇なる運命を、圧倒的筆力で描ききる!
博多を舞台に、新たな「歴史経済小説」が幕を開ける。
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ダイヤモンド社からのお知らせ
第4回「城山三郎経済小説大賞」の作品を募集しております。詳しくは、以下のホームページをご覧ください。