米国のパリ協定離脱に激震
学習効果なきトランプ政権
国際社会がトランプリスクに振り回されている。5月下旬のG7(主要国首脳会議)といい、7月上旬のG20(主要20ヵ国・地域首脳会議)といい、今年のサミットはともに様変わりした観がある。新顔のトランプ米大統領の不躾な立ち居振る舞いに翻弄されたからである。
G7では、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」からトランプ米大統領が公約通り離脱を表明、衝撃が走った。G20では、米国抜きの19ヵ国が同協定に結束して取り組むことを首脳宣言に明記、採択し、米国の孤立が一段と浮き彫りになった。中国とEU(欧州連合)が同協定の全面的な履行への連携、協調を再確認し、米国に代わって指導力を発揮すると狼煙を挙げた。
温暖化ガスの排出量で世界第1位の中国にとっては、大国の責任を印象づけて、覇権を狙う絶好の機会である。米国がトランプリスクで国際的な信頼を失墜させ、孤立を深めれば、その隙を狙って中国があらゆる国際交渉の場で影響力を強めてくることは必至だ。覇権の座をめぐる米中両国の外交戦略からますます目が離せなくなってきた。
メルケル独首相は、今年のG7を振り返って「G7は6対1(米国)であった」と総括、「欧州が他者(米と英)に頼れる時代は終わった」と、トランプ米大統領への不満と怒りを露わにした。トランプ米大統領は、今回の初外遊を控えて、周囲に「中国とロシアが参加していないサミットに何の意味があるのか」「NATO(北大西洋条約機構)は時代遅れだ。役割を終えたのではないか」などと発言、慌てさせた。
5、6月のトランプ米大統領にとっての初外遊は、G7をはじめ、国際協調とは何のための協調で、それがなぜ重要なのかを学ぶためのよい機会であった。これまで国際協調の場で先導役を果たしてきた米国の立場とその役割と責任などについても、身をもって体験できる格好の旅であったはずだ。だが、その学習効果は期待外れであった。国際秩序の初歩的な枠組みさえ全く理解していないうえ、理解する努力さえしない非寛容な性分を、この期に及んで露呈している。同協定からの離脱は、その極みであった。