ひとつのレポートがある。「東日本大震災と原発事故が日本のブランド力に対して、どのような影響を与えたか?」について調査したものだ。調査したのは、世界最大のブランド・コンサルティング会社「インターブランド」の日本法人である株式会社インターブランドジャパンである。
ビジネス・パーソンならマーケティングにおけるブランディングの重要性は理解できているだろうが、ドラッカーも指摘するように、経営とは詰まるところマーケティングとイノベーション。つまり、ブランド価値、ブランド力の評価は最も重要な経営指標であると言える。そのブランド価値、ブランド力が震災や原発事故によってどのような影響を受けたのかを知ることはやはり重要だろう。
調査は「自動車」「コンシューマーエレクトロニクス」「化粧品・トイレタリー」「食品・飲料」「アパレル」の5つの業界について、アメリカ、イギリス、中国の一般生活者を対象に行なわれた。それぞれのブランドについて「信頼できる」「安全」「高品質」「スタイリッシュ」「親しみやすい」の5項目についてブランドイメージ(以下「イメージ評価項目」)を指標とし、海外での日本ブランドのブランド力の変化を検証している。調査概要は以下の通りだ。
・対象国(都市):アメリカ(ニューヨーク)、イギリス(ロンドン)、中国(上海)
・対象者:一般生活者、20~50代男女
・標本数:アメリカ:n=108、イギリス:n=109、中国:n=109
・対象業種:自動車、コンシューマーエレクトロニクス(以下、家電)、化粧品・トイレタリー、食品・飲料、アパレル
・調査方法:ウェブ調査(提携調査会社のオンラインパネルからの抽出)
・調査ボリューム:10分程度
調査期間:2011年4月29日~5月5日
>>詳しい調査レポートはこちら。
この調査によって分かった主な傾向は以下の通り。
◎ポイント1:
震災と原発事故の影響で、海外での「日本ブランド」のブランド力は12%減。
◎ポイント2:
特に中国で「日本製品が放射能物質に汚染されている」という認識が強く、その結果ブランド力が22%大幅ダウン。
◎ポイント3:
業種別では食品(-20%)、化粧品・トイレタリー(-13%減)への影響が大きい。
◎ポイント4:
これまでの「日本ブランド」の強みであった「安全」(-17%)、「信頼」(-14%)のイメージが大きく毀損。
◎ポイント5:
震災の影響は、国、業種、イメージによって大きく異なる。
放射能への不安感で
食品・飲料ブランドが著しく毀損
つまり、「中国でのイメージ低下」が特に著しく、「食品・飲料のブランド力が毀損」されており、「放射能に対する不安感が強い」ということだ。