慶応SFCがヤフーと始めた取り組み
破格の社会資源投入が学生を本気にする

 慶應義塾大学SFCは、ヤフー株式会社の全面的な協力をいただいて、内容魅力化と就活直結と、二つのことを同時に実現しました。

 データサイエンティスト協会カリキュラム委員長でもあられるヤフーCSOの安宅和人さんを特任教授としてお迎えし、ヤフーのトップエンジニアも惜しみもなく授業に投入していただいて寄付講座を立ち上げ、「データドリブン社会の創発と戦略」という授業を昨年から始めました。内容が最高に素晴らしいので、学生たちは、まさに魅了されながら、真剣に授業を受けています。毎回、相当ハードな宿題が課されますが、多くの学生はそれに一生懸命取り組んでくれています。

 この授業での成績は、ヤフーのインターンシップの合否に影響するほか、就活でも重要参考情報とすることを、ヤフーの人事関係者と申し合わせています。その結果この授業は、SFCで最も人気があり、SFCで最も学生が真剣に学ぶ授業となりました。しかし、これもヤフーの多大なるご理解とご支援があり、破格の社会資源が投入されたおかげです。現在の費用の何倍もの社会資源が、この一コマに投資されているからです。

 東大、慶應だけではありません。私は、全国各地の大中小規模、学生の学力レベル的にも多種多様な国立、私立大学の客員教授、改革アドバイザーを数多くやってきました。どのレベルの学生であっても、教員が熱意を持って、手間暇かけて、授業内容を真に面白くし、かつ、卒業後の出口と関連づければ、多くの学生がしっかり学びに向かうことを実感してきました。

 こうした好事例が広がるためには、そうした熱意ある教員の努力が適切に評価されることがまず必要です。教員は、研究業績については極めて精緻に数値化されますが、教育業績についてはフィードバックがありません。だからこそ、IRが必要であり、卒業生を引き受ける実業界からのフィードバックが必要となるのです。

 加えて、強調したいことは、社会資源をしっかり投入すれば学生は本気になるということです。中退を増やすと言って、質の向上をしないまま、学生を脅かすよりもよっぽど効果がありますし、意味があります。

 しかし、私の実践例を他の大学や他の教授にまねていただくためには、相当な社会資源の投入が必要となり、現時点では相当にハードルが高いと申し上げざるを得ないと思います。やはり投資なのです。こういう実践を実際にやってみると、ハーバードやエールの授業料がなぜ高くなるか、よく理解できます。

 ここまで3回に分けて長々と教育への投資について述べてきましたが、こうした現場の実情を踏まえて、国民的な議論をしていただきたいと思います。

(東京大学・慶応義塾大学教授 鈴木 寛)