食事といえば、栄養学も変化している。
これまで僕たちは、栄養や健康というと、カロリーやビタミンなど「いかに体に良いものを“採る”か」が中心だった。TVでみのもんたさんが、あれこれ体にいいものを紹介すると、次の日にはスーパーで売り切れることもしばしばだった。しかし、最近は、断食(ファスティング)や酵素(エンザイム)栄養学のように、体から“出す”ことによって免疫力や体本来の機能を再起動させる方法が流行の中心だ。
「引く」ことにより、体本来のパワーを呼び起こすのだ。僕自身の経験でも、朝食を抜いても決して不健康になるということはなく、むしろ体重も適正化し、スタミナもついてくると実感している。
消費生活を広くみても、モノを持たない、という動きは、社会の様々な方面に広がっている。サーバの所有からクラウドへ、車も所有よりカーシェアへ、そして持ち家から賃貸志向、さらにはルームシェアへ。
戦後、日本人は、ひたすら「足す」ことで、“個人”の目的や利便を追求し自分の五感を満足させてきたが(機能消費)、今は逆である。個人の目的や利便をあえて「引く」、つまり不便にすることで、埋もれていた他者との有機的な関係(紐帯)を取り戻そうとしている(つながり消費)。
お金は一時的に心を満たせても
心をコントロールする力がない
成長の止まる今の社会では、お金についての考え方が変化しつつある。
お金は幸せの象徴だが、幸せそのものではない。
もちろん、お金やそれによって手に入る物は、私たちの心を一時的には満たしてくれる。しかしお金で何かを手に入れても、心はそこから離れてさらに先を求めていく。
お金は、心を満たすことはできても、心をコントロールする力を持っていない。だからお金だけでは人は幸せになれない。そこには調和がない。「心を満たすお金」と「心をコントロールする意思」の両方がそろって、はじめて人は幸せになる。