優遇措置がなくなればマイホーム価格は下がる
Aさんが上記試算と同じ支払額でマイホームを買おうとするとき、すでに優遇措置はきれているため、借入額は3130万円に抑えられてしまう。ということはつまり、Aさんが買える物件価格は、優遇があるときに比べて370万円下がるということ。よって市場における販売価格は370万円の下落圧力がかかり物件価格が下がる。
要するに低金利は、支払額を抑えるという意味では大きなメリットだが、同時にマイホームの価格を高止まりさせる効果を持っているということだ。金利が上昇すれば(このケースでは優遇措置が切れれば)、マイホームの価格は下がる。このようなことは不動産投資の世界では常識だが、マイホームの世界ではあまり知られていない。
同様に、税制優遇は、いま買う人にとってはメリットのように見えるが、やはり優遇措置が切れればそれはマイホーム価格の下落圧力。新築住宅を購入する際の固定資産税や不動産取得税の優遇はあくまで特別措置であるにもかかわらず、これまで数十年も継続してきた。昨年などは、さすがにもうこのような特例をやめようという話が出ていたが、ぎりぎりの交渉で「あと1年だけ」ということで何とか継続したいきさつがある。来年もこれら税制優遇が存続するかはたぶんに不透明。おそらく消滅する可能性が高い。
お金のことを考える場合には、毎月の支払いという「フロー」について考えると同時に、資産価格という「ストック」の面にも同時に注目しなければならない。こうしてマイホームに関わるお金についてフラットに見渡した上で、さらに一段踏み込んで留意しておかなければならないことがある。
多くのマイホーム購入家計が「債務超過」という現実
先ほど、お金のことを考えるときには「フロー」「ストック」の両側面を考慮する必要があると書いた。これをマイホームについてより正確にいえば、フローは「毎月の住宅ローン支払い」「固定資産税」などだが、ストックについていえば「住宅ローンの残高」といったマイナスのストックと「マイホームの資産価格」というプラスのストックだ。X年後の住宅ローン残高とマイホームの資産価格とは、どのようにバランスしているのかということだ。
「価値が落ちるマイホーム」を買ってしまったら、多くの家計が債務超過となる。事実、多くのマイホーム購入家計が、毎月の支払いは滞りなく済ませてはいるものの、ふたを開けると「債務超過」となっているケースを、さくら事務所では数多く見てきた。
例えば4000万円の新築住宅を、すべてローンを利用して購入したとする。新築は買った瞬間に中古になり、市場価値はせいぜい3600万円前後だ。この段階ですでに400万円の債務超過。合わせて売却にかかる費用約120万円も計上しなければならない。
ここから、住宅ローン残高と資産価格のバランスがつりあってくるのはせいぜい20年後。それまでに売却をしようとすると損が出る。つまり別途で資金を捻出しなければ売却が出来ない。特に築後10年までは建物の目減りが大きく、おおよそ半値となる。そこから15~25年程度かけてほぼゼロに近づいていく。価値が落ちることが明白なマイホームを買ってしまったら大変だ。