
日本製鉄による米USスチール買収が大詰めを迎え、米国のトランプ大統領の一挙手一投足から目が離せなくなっている。だが、トランプ政権に翻弄されているのは日鉄だけではない。国内鉄鋼業界全体がダメージを受けているのだ。特集『激動!決算2025』の本稿では、鉄鋼大手3社の決算をひもとき、トランプ氏に翻弄される国内鉄鋼大手の苦境を徹底分析するとともに、未曽有の危機にあっても成長を遂げるための“三社三様の作戦”を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
日本製鉄「4兆円買収」交渉は大詰め
トランプ氏の発言で日鉄の株価が乱高下
国内鉄鋼業界が、米トランプ大統領に翻弄されている。
その最たるものが、国内鉄鋼最大手の日本製鉄による米USスチールの買収交渉だ。一度はトランプ氏が買収を承認したと報じられ、日鉄は「トランプ氏の英断に心より敬意を表す」との声明を発表した。
しかしその後、トランプ氏は「USスチールは米国が管理する」といった趣旨の発言をしたため、事態は再び不透明さを増した。日鉄の株価は乱高下しており、株式市場もトランプ氏の言動に一喜一憂している。
トランプ氏に振り回されているのは日鉄だけではない。ただでさえ国内の人口減少や中国勢の安値攻勢で苦境にあえいでいた国内鉄鋼業界に、トランプ政権の施策が追い打ちをかけたのだ。日本から米国への鉄鋼輸出そのものは多くはないものの、間接的な影響は甚大だ。
国内鉄鋼大手が負ったダメージは、次ページのグラフのように、各社の決算にも表れている。特に日鉄が負った痛手は深刻だ。日鉄は、24年度に落ち込んだ業績を25年度に急成長させる“V字回復プラン”を描いていたが、トランプ政権の施策で下方修正を余儀なくされた。
だが、鉄鋼大手各社の決算は、悲観すべき点ばかりではない。未曽有の苦境から浮上するための秘策も隠されているのだ。
次ページでは、トランプ政権に翻弄される国内鉄鋼大手の苦境を徹底分析するとともに、未曽有の危機にあっても成長を遂げるための“三社三様の作戦”を明らかにする。