物価高対策で消費税減税は大間違い、それよりも「最低賃金100円引き上げ」を2025年春季労使交渉、「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の施策パッケージ案及び最低賃金の引上げ方針について、労使の方々との意見交換が行われた(写真は発言する石破茂首相〈中央〉=5月22日、首相官邸) Photo:JIJI

どの国もやっていない物価で消費減税
インフレ圧力がさらに高まるだけ

 7月の参議院選挙を前に与野党の間では、主に物価対策として、消費税廃止や税率5%への引き下げ、食料品0%などの「消費税減税」が提案されている。

「減税ポピュリズム」の様相と言っていい。

 だが、そもそも物価高の時に減税をすることは世界のどの国でもない。なぜなら、購買力が増えて同じように供給が増えなければ物価はさらに上昇するからだ。

 日本では、コストプッシュインフレだからインフレ圧力は増えないと誤解する人がいるが、インフレの原因と関係はなく、インフレになった以上、購買力を増やしてデマンドプルのインフレ要因を加える政策を実施すれば、インフレ圧力は高まる。

 消費税廃止や一律5%引き下げの消費税減税をすれば、そうなることは明白だ。生活に困っていない人まで購買力を増やすからだ。消費税減税は、消費をする富裕層ほど恩恵が大きいので、消費の単価が高くなっても、そうした層の消費は減らず、インフレ圧力が増す。一方で物価高に苦しむ低所得層の負担はますます重くなる。

 消費税廃止や一律減税を主張する減税賛成派は、「日本国民は困っているから減税を」と言うが、それは単なる詭弁だ。国民全員が困っている事実はなく、低所得層が困っているのに高所得層が多大な恩恵を受ける政策は大間違いだ。

 世界中どこを見ても、物価高対策として消費税を大幅に下げている国がなぜないのかを考える必要がある。

 物価高の時は民間では賃上げをすることが原則だからだ。