菅内閣の総辞職を受けて、9月2日に発足した野田新内閣は、一先ず順調なスタートを切ったようだ。野田内閣の支持率は67%(不支持率は21%)と、就任時の鳩山内閣の75%、菅内閣の68%には及ばなかったものの、政権発足時の内閣支持率としては歴代6位の高位置を占めた(9月4日付日本経済新聞朝刊、世論調査を参照。以下同様)。

 政権発足時の評価は人事と政策であらかた決まる。世論調査の結果に照らし合わせながら、まずはこの2つから、論じてみよう。

党内融和は当然
幹事長に輿石氏という「英断」

 野田首相は、人事の要となる幹事長に小沢氏に近いとされる輿石参議院議員会長を捉えて党内融和を強く演出した。この作戦は成功したようだ。なぜなら、「野田内閣や民主党執行部の顔ぶれを評価する」との回答は48%、「評価しない」は29%だったからである。わが国の小沢アレルギーは、メディアの常軌を逸した報道振りとも相まって異常に増幅されており、小沢氏と「距離を置くべきだ」が65%で、「協力すべきだ」の24%を大きく上回った。それにもかかわらず、人事全体としてはほぼ過半に近い評価を受けたのである。

 しかし、よく考えてみれば、党内融和は当然だ。8月29日に行われた民主党の代表選では、党内最大の小沢グループの支授を受けた海江田氏が1位で143票を集めたのに対し、2位の野田氏はそれより41票も少ない102票に過ぎなかったからである。決選投票では、2・3位連合が奏功し、野田首相が新代表に選出されたが、票差は38票でしかなかった。このような党内事情を考えれば、小沢グループを排除した党運営など、そもそも初めから成り立つはずもないことが素人目にも解る。

 筆者は小沢氏とは一面識もないが、野田首相が小沢氏に近い輿石氏を要石に据えたのは定石通りの「英断」だったように思われる。けだし、人間は分かっていても、なかなか定石通りの手が素直には打てない動物だからだ。後は「首相の強いリーダーシップの発揮」(「野田内閣が最も重点を置くべきこと」に対する回答として53%があげた。なお、次点は「野党との積極的な協調」の31%)を期待するのみである。