「チルドレン・ファースト」など、基本方針9項目は妥当
問題は、掲げた課題を実行する力
野田内閣は、9月2日の組閣後に開かれた初閣議で9項目の基本方針を決定した。わずか2ページの文書であるので、ぜひ目を通してほしいが、そのポイントは次の通りである(筆者のまとめによる)。
- ① 国民目線に立った政治の実現に邁進
- ② 省益にとらわれることなく一体となって課題に取り組む。国民、与野党を問わず「対話の政治」を実践
- ③ 「行政の無駄遣い」を根絶、既得権を打破
- ④ 東日本大震災の復旧・復興の取り組みを加速。原発事故の収束は「チルドレン・ファースト」で
- ⑤ 経済成長と財政健全化の取り組みを両立
- ⑥ 社会保障・税一体改革成案を早急に具体化
- ⑦ 世界に雄飛する人材の育成
- ⑧ 日米同盟を基軸とした外交。アジア諸国等との多角的な結びつきを高める
- ⑨ 政務三役と官僚は情報共有と意思疎通を図り、一体化となって政策運営に取り組む
最初の3項目は、野田内閣の政治に取り組む基本スタンスだと理解していいだろう。④から⑥は当面の優先課題に対する基本方針だと思われるが、民意をほぼ忠実になぞっているようだ(野田内閣に優先的に処理してほしい政策課題を複数回答で訊いたところ、トップ3は「震災復興」63%、「景気や雇用」46%、「年金・医療・介護」37%だった)。
ただ、原発事故の収束に際し、「未来を担う子供や妊婦への対応を優先的に実施し、『チルドレン・ファースト』を実践する」と明記したことは、高く評価されて然るべきではないか。わが国では、これまでともすれば高齢者への取り組みが優先され、「未来を担う子ども」「チルドレン・ファースト」といったグローバル世界では至極当然の原理・原則が軽視されてきたきらいがあるので、このくだりはかなり新鮮な印象を受けた。
⑦では教育等、やや中期的な課題を取り上げ、⑧は外交方針、そして最後に⑨で、官僚との二人三脚を表明している。このコラムでも何度か(6月28日、7月12日等)指摘したように、わが国が採るべき処方箋はほぼ出尽くした感がある。後は、実行あるのみである。そして、政策を実行するためには官僚をうまく使いこなすことが必要であることは言うまでもあるまい。以上のような観点から総合的に考えれば、基本方針9項目は概ね妥当であると言えるのではないか。