ルネサスにも危機感はある。17年2月にアナログ半導体メーカー、インターシルを買収した。アナログ半導体は職人の匠の技が必要な製品。通常の半導体より参入障壁が高いため、高収益が見込める。

 だが、買収額は32億ドル(当時のレートで約3200億円)と、数兆円が飛び交う半導体の買収合戦の中にあってはいかにも小粒だ。

 そこで求められるのが次のM&A(企業の合併・買収)だ。ルネサス幹部は「チャンスがあればやりたい」と案件を模索する。

 折しも同社の筆頭株主だった官民ファンドの産業革新機構や旧親会社3社が6月に持ち株を一部売却。4者の出資比率が下がったことで、増資による資金調達をしやすくなった。

 ところが、ルネサスは現時点で新株発行の必要性を否定する。

 インターシル買収でフリーキャッシュフローが3375億円のマイナスに落ち込み(図(4))、有利子負債が増えたが、そこから現預金を引いた純有利子負債は1500億円と純資産の3分の1ほど。財務の健全性を示す負債資本倍率(DEレシオ)は0.54で競合よりは健全といえる。

 そのためルネサスは、銀行融資でM&Aの資金は賄えるとみている。裏を返せば兆円単位のM&Aは考えていないとみられる。

 半導体メーカーの買収額が高騰する中、インパクトのある案件をまとめられるのか。呉文精社長の目利き力が問われるところだ。

 中長期では、グローバル企業に脱皮できるかという課題がある。「ルネサスの半導体のシェアは、日系自動車メーカーの売り上げ次第」(業界関係者)。それほど日系の顧客に依存してきたのが実情だ。欧米での売り込みを強化するために、海外拠点の社員の現地化や、販売代理店網の強化が必要になりそうだ。