Photo by Yuito Tanaka
インバウンド6000万人時代に向けて、日本の空港運営は大きな転換点を迎えている。とりわけ多くの人手を要する地上支援業務では、省人化と効率化が待ったなしの状況だ。そうした中、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)が貨物運搬業務の一部自動運転化に踏み切った。その狙いはどこにあるのか。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)
グラハン業務の自動運転
ANAとJALがついに実用化!
2025年12月15日、永遠のライバルである全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)の両トップが一堂に会した。ANAの井上慎一社長とJALの鳥取三津子社長が並んで、共同記者会見を開いたのだ。めったにないことだけに、航空業界では大きな注目を集める事態となった。
両社長が発表したのは、羽田空港で一部自動運転を行う「トーイングトラクター(空港で手荷物や貨物を運搬する車両)」の実用化だ。
両社とも10年代後半より検討を始め、開発に着手してきた。これまでJALは運転者が常時監視する「自動運転レベル3」での運用を目指し、ANAは運行場所を限定して完全自動運転を行う「レベル4」での試験運用を行ってきた。ところが、12月15日以降は、両社共にレベル4の自動運転の実用化を開始したのだ。
さらに、JALの鳥取社長は会見で、「ANAをはじめ、その他のエアラインとも協力してグランドハンドリング業務の生産性向上にチャレンジしていきたい」と意気込みを語った。そこには、ANAやJALをはじめとした国内の航空会社にとって、喫緊の大きな課題が三つある。
とりわけ、今回の自動運転技術の導入による「空港DX(デジタルトランスフォーメーション)」の成否は、ANAとJALの中長期的な事業戦略にも直結する。そこで次ページでは、永遠のライバルである両社を突き動かした、三つの課題について詳述する。







