2.一流は「自分」を研究し、二流は「相手」を研究する
また、EMBAにくるビジネスパーソンは要職にある人がほとんどだ。つまり、EMBAはリーダーとしての学びを得る場だ。
リーダーになったときに何を学ぶかと考えたとき、意識の高いビジネスパーソンでも「部下の動かし方」などを学ぼうとするはずだ。
だがEMBAでは、まず「自分を知る」ことから始める。リーダーシップにおける最初の授業は「あなたはどんなリーダーなのか?」という問いから始まるのだ。
UCLA-NUSのEMBAのリーダーシップクラスでは、第1回の授業が始まる際、準備として自己評価および周囲の人たち(同僚・後輩・上司など約10人)に以下のようなアンケート(「360度サーベイ」と呼ばれているものだ)を行ってくることが義務づけられていた。
・他人から尊重されるように行動しているか?
・自分の興味関心を越えてチームの利益のために働いているか?
・共通の使命感を持つことの重要性を主張しているか?
・自分が大切にしている価値観や信念を話しているか?
・ゴールは達成できるという確信を表明しているか?
・将来のビジョンを明確に表現しているか?
・他人をグループの一人ではなく、個人として扱っているか?
・個人それぞれに違ったニーズ、能力、情熱を尊重しているか?
・教えることやコーチングに多くの時間を費やしているか?
・課題解決のための新しい方法を提案しているか?
ここでは例として10個ほど挙げたが、もっと多くの質問事項について、自己評価と他者からの評価を5段階評価で行い、それを材料にして第1回目の授業が行われる。
授業では、この結果について科学的に分析した内容が提示され、「自分の認識と周囲の感じ方の違い」、あるいは「一致しているポイント」について教授と一対一で対話をしたり、生徒同士でオープンなディスカッションをする。
そうして自らの「リーダーシップ・スタイルを知る」ことが、さらにレベルの高いリーダーを目指すには重要となる。
すでに述べたとおり、EMBAにはグローバル企業のトップ、経営幹部、シニアマネジャークラスの人たちが集まっている。リーダーとしてすでに幾多の困難を乗り越え、成功してきた人たちだ。
そんな人たちであっても、リーダーシップについて何を学ぶかといえば、まずは「自分を知る」ということなのだ。彼らも私たちと同じように、その結果に新鮮な驚きを覚えながら、自らのリーダーシップ・スタイルを見直すヒントにしていく。
ビジネスエリートがリーダーシップについて学ぶというと、世界を股にかけて活躍するグローバルリーダーをモデリングするとか、最新のマネジメントスキルを身につけるなど、テクニカルな側面がイメージされがちだが、実際に彼らが学んでいるのはそんなことではない。これまでより一段高いステージで仕事をしたければ、まずは「自分を知ること」、そこから始める必要があるのだ。