日本相撲協会の理事選に貴乃花親方が出馬を決意したことが波紋を呼んでいる。
理事選に出馬するだけのことが、なぜ騒動になるのか。それは相撲界の慣例を破る行為だからだ。
相撲協会の規定によれば理事の定数は9人以上13人以内。任期は2年だ(再任可)。現在は年寄衆による内部理事9人と識者による外部理事2人の11人で構成されている(内部理事は10人だったが、間垣親方が弟子の大麻所持の不祥事で辞任したため)。
このメンバーによって開かれる理事会は相撲協会の最高議決機関で、大相撲での重要事項を決定する。また協会最高位の理事長は理事の互選で決められ、他の理事は事業部長、巡業部長、審判部長、広報部長などの役職を務める。ちなみに理事の月給は144万8千円。これに年度末手当や勤続手当などがつき、年間1千800万~2千万円の報酬を得る。
理事は評議員による投票によって決められる。評議員は年寄株を持つ親方衆+大関以上の日本人力士(現在は琴光喜と魁皇)と立行司2人で現在109人。理事選は初場所後、今年は2月1日に行われる。
今回の貴乃花親方の決断と行動は、この理事選を混乱させているのだ。
共栄共存の相撲界では
元来、理事選は「無風選挙」
大相撲は典型的なタテ社会だ。十両以上の「関取」に出世した者だけが、高額報酬を受け、支援してくれるタニマチもつき、数億するといわれる年寄株を取得して親方として相撲界に残れる。その中でも横綱・大関・関脇など幕内上位で活躍した者が一門のリーダーになり、一定の年齢になると理事に推されるという構図になっている。
現在相撲部屋の数は52あるが、このうちの51部屋が5つある「一門」に属している。一門とは大相撲の系統で、連合げいこを行うなど部屋運営の協力をし合うグループ。いわば派閥のようなものだ。
理事は一門の代表であり、理事選では各一門に所属する評議員(親方衆)が、その代表に投票する。政界に例えれば政党のようなものといえるだろう。