教え1 他人に倣うな
小さいころに父がよく言っていた言葉が、40歳を過ぎた今になって心に響いています。その一つに「他人に倣うな」という教えがあります。
僕が小学校2、3年のころだったと思います。父が「今日、何ば習ってきたか」と聞くので、僕は「分数の割り算を習ったばい。ひっくり返して掛けるとよ」と喜々として答えたのです。
父は「おおそうか、それはよかったな」と。ですが、こう続けたのです。「ばってん、泰蔵ね。学校の先生は、時々うそを教えるぞ。先生の言うこと聞くなよ」と。
これには子供なりに、「ええー」とショックを受けました。「何でそんなこと言うとよ。学校の先生、結構いいこと言うばい」と僕が先生をフォローしたほどです。「父は変なことを言うなあ」と幼心に強く印象に残ったのです。
ですが、自分が親の世代になってハッとしたのです。要するに、父は「何でもうのみにせずに、常識を疑って自分の頭で考え知恵を絞りなさい」と伝えたかったのです。それを普通に言っても忘れてしまうので、強烈に印象に残るような言い方をしたのでした。
そもそも今、教育の世界では「21世紀のスキル」として、「4C」という考え方が広まっています。4Cとは、四つの単語の頭文字に由来しており、AIやロボットが進化していく中で、人間に求められる力のことだと考えられています。具体的には次の四つです
1)クリエーティビティー
2)クリティカル・シンキング
3)コミュニケーション
4)コラボレーション
ここで全ては語りませんが、例えば、批判的思考とも訳される「クリティカル・シンキング」というものは、まさに父の教えそのもの。皆が当たり前に言うことを本当かなと疑ってかかる力のことをいいます。