希望条件の誤解が
ミスマッチを生む

 熟練のキャリアコンサルタントであれば、候補者の希望を適切に聞き出すことができますが、経験の浅い、あるいは実力の低いキャリアコンサルタントである場合は生じた誤解に気づかない恐れがあります。その結果は転職者にとって紹介される仕事と真の希望とのミスマッチが起こるのです。

 現状は異常にハードな環境に置かれているので転職したいが、基本的にはバリバリ働いて給与は維持かアップさせたい。こうした希望なのに極端な話、「ワークライフバランスを回復したい。年収は1000万円以上が希望です」と伝えたら、相手に「何を言っているんだ、この人は?」と思われかねません。

 こうした事態を避けるには、定義があいまいな流行り言葉を安易に使わないことです。

 もう一つ事例を紹介しましょう。やはり「ワークライフバランスを取り戻したい」という転職希望者に、具体的に希望を聞き出していった時のことです。

「今の会社では毎日夜11時ぐらいまで残業しているのですが、残業手当込みで月の手取り給与は25万円、ボーナスは年間3ヵ月です」

「それは本当にひどいですね」

「実のところ、もっと給与を払ってくれるなら、これぐらい働くのは構わないと思っています。働くこと自体は楽しいし、好きですから。しかし、さすがにこれだけ働いてこの給与額ではなんだかなあと……」

 つまり、「ワークライフバランス」という言葉でイメージされる定時退社できる会社への転職ではなく、働いたら働いた分だけ給与をきちんと支払う会社に転職したいというのがこの人の真の希望だったのです。

 本人は言葉の意味をあまり吟味せず、労働環境の悪さを強調するために「ワークライフバランスを取り戻したい」と言ったようですが、自分の希望を的確に伝える表現ではありません。