1980年、旧日本電信電話公社の研究所は、高純度の光ファイバーを製造する装置を開発した

 たとえば、米空軍の研究所からアクセスサービスシステム研究所に転じた岡宗一主任研究員は、持論を明かす。「これだけ優秀な人たちが揃っているのに、研究の行き先に困っている。たとえば、実用化後の具体的な世界をイメージせず、ただ漠然と研究開発を続けて、数年たってから『この技術は役立つはず』と言っても意味がない」。

 この古くて新しい問題に対して、NTTの研究所では、2000年に、研究所と事業会社との“橋渡し役”として事業会社を担当する専任のアカウントチームを立ち上げた。研究所サイドが事業会社に出向いて研究の内容を紹介したり、事業会社との意見交換を重ねたりした。

半導体の開発に使うクリーンルームも常時稼働する

 だが、それでも研究開発の活性化には結び付かず、はかばかしい成果を上げられなかった。そこで、03年からは、今度は持ち株会社の研究企画部門が「プロデューサー制」(技術の“目利き役”を専任で指名)を導入し、研究所と事業会社間のギャップを埋める交通整理に乗り出した。

 しかしながら、それでもいまだにNTTは、死の谷を越えられずにいる。もちろん、なかにはNTTコミュニケーションズの子会社が手がける「ひかりTV」のように、研究所で開発した技術を使って大きな成果が出せたサービス(11年6月末で219万契約)もあるが、そのほかにはインパクトのあるサービスが出ていない。

 情報流通基盤総合研究所の辻ゆかり企画部研究推進担当部長は、こう力説する。「研究開発のスペシャリストは必要だが、多くの研究者が苦手な“いかにしておもしろい研究ネタを外部に打ち出すか”について、溝を埋めるだけの陣容を整えられる人がもっと必要」。

 次回は、NTT本体が自らの存在意義を問われる潮目の変化に巻き込まれた背景や、事業基盤が根底から覆ってしまったことによる影響について詳述したい。

※後編の「NTT本体の基盤が揺らぐなかで研究所は存在意義を打ち出せるか」はこちらです。