(4) IT化の前提と制約

IT化の方針までが決まれば、そのまま実際のシステムについて考え始めたいところですが、その前に、「前提条件」「制約条件」を明らかにする必要があります。

前提条件とは、たとえば、「このITシステムで溜め込んだデータは、他でも使うかもしれない。そのときのために他のシステムでも読み込める形式で保管できること」のように、「まだ確定していないが、とりあえずそう考えておこう」という事柄です。

一方、制約条件とは、「残業規制があるので、夜の8:00から朝の9:00までは社員は仕事ができない」などのような、ITシステム導入プロジェクトでは変更することのできない外部条件のことです。

(5) システム化要件

ここまでのステップを踏んでやっと、システムが持つべき「機能要件」「非機能要件」(2つを合わせて「システム化要件」と言います) を本格的に考える段階に入ります。

機能要件とは、「システムに何を入れたら、どんな処理をして、何を出力するのか?」ということです。「Web画面から商品の番号と個数、希望納期を入れたら(入力)、在庫を確認して納品日を算出すると共に個数に応じて値引き金額を計算した上で(処理)、その結果を画面上に表示する(出力)」といったようなことを決めるわけです。

非機能要件というのは、機能要件以外でシステムが具体的に備えておくべき特徴をまとめた言葉で、「処理の速度」や「溜め込むことのできるデータの量」、「使い勝手」や「セキュリティ」などを定義することになります。

以上、要件定義全体の概要についてお話しました。
次回以降、詳しくその内容を解説していきます。

さて、今回の内容を簡単にまとめておきます。

(1)企業や組織にどんな課題があるのかを確認する(IT導入の背景と目的)

(2)それを達成するために業務をどう変えるのかを考える(業務要件定義)

(3)そこにどんなITシステムが役立つのかを検討する(IT化の方針)

(4)さまざまな条件を考慮する(IT化の前提と制約)

(5)具体的にどんなシステムを導入するのかを決める(システム化要件)

ひとまず、ITシステムを導入するときの要件定義とは、こんな順番で作業していく、とだけ覚えておいてください。

※本連載と合わせ、誰も教えてくれなかった「システム開発における発注者側の役割」と「成功のポイント」をストーリー形式でまとめた発注者のテキスト『システムを「外注」するときに読む本』を使い倒していただき、ご自身のプロジェクトで実践していただければ幸いです。