聞:「完全にNOと言うわけにはいきませんが、優先順位的には、1on1で最も重要な目的は、『部下の考え』について話すことです」
相:「なるほど、部下が何を考えているかを一緒に明らかにすることが目的なら、確かに、出てきた答えに正解も不正解もないですね」
聞:「そうなんです。『そうか、だからこういう結論に至ったんだね』と上司が言うとき、部下は自分が尊重され、丁寧に扱われたと感じます。そして同時に、上司に手伝ってもらうことで、自分自身の考えがあらためて整理されますから、綻びや新しい選択肢を自ら気づく糸口を得ることになります。上司にとってはちょっと面倒に感じられるかもしれませんが、このプロセスを経て、部下の心と才能が開いてくることが期待できます」
相:「だいぶモヤモヤが晴れたような気がします。1on1では、まず部下の考えを明らかにすること。そして次に、その考えがビジネスにフィットするかどうかの判断、といった具合に、明確に2段階にわけて進めるということなんですね」
聞:「はい。自分のことは自分がよくわかっているというのはたいてい錯覚で、誰でもそうですが、部下も自分の考えが常にスッキリ整理できているわけではないはずです。そこに上司が支援する余地が出てくるわけですね」
実際の相談では、もちろんこんなにスムーズなやり取りにはなりません。あくまで筋を理解していただくために整えているところはありますが、こうした2段階ステップのお話をすると、概ね理解してもらえる場合が多いです。
そして、理解の次は実践です。理屈がわかっても、すぐにできるかどうかは別な話です。ということで、今回のテーマである傾聴について、せっかくなので読者の皆さんに試していただきたいことを提案して終わりにしようと思います。
◆第1ステップの問い :「この部下が伝えようとしている内容はどんなことだろうか?」
◆第2ステップの問い :「この部下の話している内容は理にかなっているだろうか?」
直近で部下と話をする機会に、上記のうちの「第1ステップの問い」を自分自身に投げて対話を始めてみてください。あなたの傾聴姿勢は、これまでより優れたものに変化しているはずです。
(ヤフー コーポレートグループ ピープルデベロップメント部 吉澤幸太)