なぜ円高圧力は弱まってきたか

 円高に向かう力が弱くなってきたのは、海外の機関投資家が、円(日本)に対する投資を減らしているからである。海外の機関投資家は、為替市場で円買いを行ったとしても、そのまま預金口座に置いておくことはしない。投資の対象は、株式系と債券(国債)系に2分される。本連載のバックナンバー『日銀の市場経済を止める施策を、海外は厳しい目で見ている』で説明したが、海外投資家は日銀のETF買いにガバナンス上の問題を確認し、企業の成長への期待が見いだせず、日本株への投資を控える一因になっている。

 そもそも、日本の機関投資家は基本的には多額の海外投資を行っていることは申し上げた。そのため、特に東京市場では大量にドルが不足している。すなわち短期のドル円では、邦銀がドル買い円売りとなる。ということは、海外の機関投資家や外銀にとってみると(サイドが読めて)“有利な為替レート”(ドル高円安)で取引ができるということだ。これが、彼らが有利な運用ができる仕組みである。

 そのためドルなどの外貨から、利率は良くなくとも日本国債に投資をすれば、収益を出すことができた。しかし最近は日本国債の金利も10年物が0%近辺をターゲットにしている。つまり10年物以内はマイナス金利が定着化してきて、さすがにきつくなってきた。

 為替レートでいい条件が出たとしても、そもそもの運用利回りは低下せざるを得なくなってきたわけだ。しかも、日本国債の長期格付け(S&P)はA+で高いとは言えず(ドイツはAAA、米国はAA+)、購入する理由もなくなってきている。

 筆者はこれと同じ経験をしたことがある。当局の方々と一緒に、日本国債を海外の中央銀行等の機関投資家に販売に行く「海外IR」に参加した時のことだ。当時も、海外の機関投資家から「利回りも格付けも良くなくて買う理由がない」と言われた。

 実際、海外の機関投資家の動きが具体的に見えてきている。中でも「ノルウェー年金基金(SWF)」はこの数年、通知後に日本国債の売却を継続していたが、今般いよいよあと2兆円分も売却すると日本サイドに通知があった。日本国債については、日銀が年間80兆円という大量購入を継続し、結果的に買い占めの状態になり、流動性が枯渇し市場機能が低下していることも理由にあげている。

 こうした海外機関投資家の「日本売り」が今後加速しないか、注意する必要があるだろう。もしかすると「低リスク通貨」としての円が転換を始めているのかもしれない。

(博士[経済学] 宿輪純一)