今現在、実用化に近いのはカナダの企業が開発したウイルスで、欧米で抗がん剤との併用試験の最中だ。国内では、東京大学医学部脳神経外科のグループがヘルペスウイルスを改変した「G47Δ」を使い、脳腫瘍の一種である膠芽腫を対象に臨床研究を行っている。安全性や抗腫瘍効果を慎重に検討している段階だが期待は大きい。

 とはいえ、ウイルス療法の研究はようやくヒトへの投与が始まったばかり。長期的な治療成績もだが、万が一、治療用ウイルスが暴走した場合の対処など従来とは異なる課題もある。人類の黎明期から営々共存してきたウイルス。はたして今度は、がん制圧のパートナーになってくれるのだろうか。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)