海外では使えるクスリが、日本で使えるまでに時間がかかる。「ドラッグ・ラグ」の問題は、ことガン医療の分野に限っては、昨今ではかなり解消されてきた。ガン治療薬のラインナップは世界標準に近づくと思われたが、意外な分野で格差が再び開きつつある。三つの課題を取り上げた。

“第4の治療”の期待高まる
ワクチン

 手術、化学療法、放射線療法に次ぐ“第4の治療”と期待されるのが「ガン治療ワクチン」だ。

 今最も進んでいるのは、「ペプチドワクチン」と呼ばれるワクチンの一種だ。現在、メルクセローノが非小細胞肺ガンなどを対象としたワクチンの、グローバルな治験を実施中だ。そのほか、バイオベンチャーのオンコセラピー・サイエンスなどが、進行膵ガンなどを対象に、大手企業と共同でワクチンの開発を進めている。

 ペプチドワクチンの仕組みはこうだ。まず、ガン細胞の表面にあるタンパク質の断片(ペプチド)を採取し、これを注射する。すると、自分の免疫細胞が増殖し、ガン細胞への攻撃が促進される。その結果、ガンが治ったり、進行が止まったりするというものだ。自分の免疫細胞であるため副作用は比較的少ない。

 ペプチドワクチンは、今のところ当局の承認を得ていない。通常、未承認のクスリを用いると、保険が使える検査などすべての医療費が個人負担となるが、昨年、例外的措置が決まった。久留米大学病院での前立腺ガン治療に健康保険との併用が認められたのだ。

 また、ワクチンで先行する米国では、2015年までに10~15品目のワクチンが開発される見込みだ。それらが日本に導入される可能性もあり、国内のワクチンに対する評価基準の明確化が望まれる。

ガン治療“画期的新薬”をめぐる日本の課題