絵からも読み取れる芸術家の地位向上

 職人から芸術家へと地位が向上したことを象徴する作品として、ミケランジェロが教皇ユリウス2世の命により描いた「システィーナ礼拝堂の天井画」があります。創世記を主題にしたこの天井画ですが、当初の教皇の注文は12使徒を描くことでした。しかしミケランジェロ自身の判断で現在見られる構成となったのです。

レオナルド・ダ・ヴィンチが、経歴書に「軍事技術者」と書いた理由システィーナ礼拝堂の天井画の一部「アダムの創造」(1511年頃)。神とアダムの指先が触れようとしている


 そのこと自体、これまでの職人としての社会的地位では許されないことです。この天井画のハイライトとも言える「アダムの創造」の場面でも、聖書では「神がアダムに息を吹き込んで人間が誕生した」とあるところを、神が指先からアダムに生命を授ける構図で描いています。つまり、完成時に「神のごとしミケランジェロ」と称えられたように、描いた彼独自の解釈や見解が認められたわけであり、そのこと自体が職人ではなく芸術家としての地位が確立されたことの証でもありました。

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