身長90ミリメートルでマシュマロのように白くて柔らかい質感に、「Z」と「Q」の目と、口の形が「A」という右画像のキャラクター。
愛らしいのか、気持ちが悪いのか評価はわかれるところだが、じつはこれ、関西地域では高い認知度を誇る「ざっくぅ」というキャラクターだ。
このざっくぅが10月末から満を持して全国に進出してくる。10月27日からテレビCMに登場、11月1日からは、山手線をはじめとするJR線や私鉄を広告で埋め尽くして“ジャック″する。
じつはこれ、ケーブルテレビ最大手のジュピターテレコム(JCOM)のイメージキャラクター。もともとは、JCOMと関西電力などが中心となって設立したインターネットサービス会社で2003年に生まれ、関西を中心に普及していった。その会社が11年4月、JCOMの完全子会社となり、全国展開の機会をつかんだというわけだ。
ざっくぅは「ずっと、安心のクオリティ」という言葉の頭文字をとった「ZAQ」ブランドのネット事業の旗振り役だ。もともとは、キーボードの左端の文字から由来している。
その浸透力は関係者も驚きを隠さない。関西地域でJCOMに入った理由のトップはいまや「キャラクターがかわいいから」となっている。子どもたちに受けたことで、「ざっくぅ体操」がうまれ、UHA味覚糖と組み、グミの商品化にも至った。
それでは、なぜいまこのネットのブランドキャラクターを、ケーブルテレビ会社が大々的に打ち出すのだろうか。
じつはJCOMの事業戦略において転換期が訪れている。
ここ2~3年続いた「地デジ特需」が7月のアナログ放送の終了でなくなり、ケーブルテレビ事業をとりまく環境が厳しくなってきているからだ。
これまでは、「ケーブルテレビにすれば地上デジタル波のテレビが見られます」と話せば、客も耳を傾けてくれた。そこを足掛かりに、有料番組のさらなる提供や電話サービスを勧めることができた。
そうした売りもなくなれば、「多チャンネル化」もなかなか進展しない。そこでケーブルテレビ事業そのものを増やすよりも、そのケーブル網を生かして、ネットの加入を増やす戦略に切り替えたのである。
9月末時点のJCOMのネット加入者は178万8100世帯と、業界5位。だが、すでにケーブルを敷設して加入者になりえる潜在顧客世帯は1333万世帯あるという。仮に100万世帯を掘り起こすだけで、年間約600億円の増収効果につながる。
とはいえ、競争は激しい。阿賀谷匡章・JCOM通信事業部長は「市場の半分は既に他社に奪われているから、ひっくり返していかないといけない」という。
そこで、ざっくぅの力を借りようということだが、果たしてざっくぅは、期待に応えることができるのだろうか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)