画像診断でおなじみの超音波を使ったHIFU(高密度焦点式超音波療法)は、がん細胞に焦点を合わせて超音波を集束し、がん細胞を加熱する治療法である。子どもの頃、虫メガネで太陽光を集めて遊んだことはないだろうか。要は、あの原理でがん細胞を80度以上に熱し死滅させるというわけだ。焦点より手前の細胞にはダメージがない。
照射方法には、身体の内部に超音波を発するプローブを挿入するタイプと、身体の表面にプローブを当て照射するタイプがある。前立腺がんを適応として承認申請中の方法は、内照射タイプ。全身麻酔や局所麻酔下で肛門からプローブを挿入し、少しずつ焦点をずらしながらがん細胞を焼いていく。失禁や勃起障害などの副作用が報告されているが、頻度は少ない。治療後すぐに普通の生活に戻れる点もメリットだ。
一方、肝がんの治療で臨床研究が進められているのは外照射タイプで、超音波検査と同じように皮膚の表面にゼリーを塗り、そこにプローブを密着させて超音波を照射する。患者は腹部を露出し、普段着のままでベッドに横たわるだけ。究極の身体に優しい治療法だ。検査時との違いは、照射する数秒間は息を止める必要があること。内臓が動くと焦点がずれてしまうからだ。1回の照射範囲が3×3×10ミリメートルと小さいので、3センチメートルのがん塊を焼こうとすると2~3時間はかかる。ここが難点だが、麻酔もない、痛みもない、放射線被曝を気にする必要もないというのは、やはり魅力的だ。