仕事を楽しまない人がいてもいい
うつ病で会社を休職している人の事例で考えてみましょう。
ある人に症状の改善が見られたので、復職を考えてみましょうと持ちかけました。すると、その人は休職する前の会社の環境や自分の働きぶりを思い返し、さまざまな不満が甦ってきたといいます。
あの上司のもとではもう働きたくない。また遅くまで残業をするのは嫌だ。
せっかく復職するのだから、以前の状態を少しでも変えてもらってから復職するようにしてみましょうと提案すると、「少しぐらい変えても意味がない。結局本質は変わらない」と訴えてきました。
職場の本質をすべて変えるのは難しいことだと説明しても、その人は「自分も本調子ではない状態で、本質が変わらないまま復職しても、結局は以前と変わらずそれなりの働きしかできない」と復職に躊躇するのです。
職場環境が急激に変わることはなく、復職した人が急にスーパーマンのような働きができるわけでもありません。
会社側は、復職したらすぐに100%の力を発揮してもらおうとは考えていません。それなのに、休職していた人は100%できないとダメだと考えてしまうのです。
まずは復職することを優先して、だましだましやっていくなかで、徐々に慣れていくことで十分なのです。
結局、そういう人は復職に踏み切れず、いたずらに時間を費やしたあげく会社を辞めるという極論に至ってしまうケースが多いのです。
近年、うつ病になる人が増えています。
その背景の一つに、上司とソリが合わない、自分の言うことが伝わらない、残業時間が非常に多いなどという、大きくくくれば、「よくあること」をストレスに感じてしまう自分を許せないということが原因になっているのかもしれません。
そうしたストレスを抱えつつ会社に行くのは楽しくはないでしょう。しかし、毎日仕事に行くのが楽しくなくてもいいのではないでしょうか。少し嫌だと思いながら行っても、それは大きな問題にはならないはずです。
にもかかわらず「それは妥協だ」「仕事はそんなものではないはずだ」「毎朝仕事に行くのが楽しくて仕方がないはずだ」という意見が多いのはなぜでしょうか。私には、仕事は楽しまなければならないものだと考えてしまっているように見えてしまいます。
プロスポーツ選手でも、すべての練習を楽しんでやっているわけではありません。
ときには「嫌だなあ」と思いながら取り組むこともあると思うのです。それをファンの前で口に出すか出さないかは重要でしょうが、そんな中途半端な気持ちで仕事に行くことは、決して悪いことではないと思います。