今回、トランプ大統領はイエレンの他に、現在FRB理事のジェローム・パウエル(64歳)とスタンフォード大のジョン・テイラー教授(70歳)を候補としてあげた。テイラーは、経済や金融に詳しい方はご存じかもしれないが、GDPやインフレなどの経済指標から適切な政策金利水準を計算する「テイラールール」を考案した。イエレンとパウエルはほぼ同じ考え方のいわゆるハト派で、テイラーはタカ派だ。

 このような人事を予想する場合、経済学がベースなりながらも、政治も含めた“総合的な分析”が重要になる。先日、ワシントンのFRBやIMFそして世界銀行を訪問してきたが、節々にトランプ大統領への意識が強く感じられた。トランプ大統領は当然のことながら景気を重視する。そうなると、ハト派のイエレンか、パウエルかという事になる。

 そこで最近の議長の任期を見てよう。ボルカーは8年、グリーンスパンは長くて18年半、前任のバーナンキも8年在位した。そういった観点からは、イエレン継続の可能性が高い。もしパウエルが選ばれるとするならば、オバマ大統領の時に指名されたのでイメージ一新を図るためか、他の主要な中央銀行の総裁の年齢と比べた場合の若返りではないか。ECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ総裁は70歳であるが、次期総裁に就任する可能性の高いドイツ連邦銀行のイエンス・バイトマン総裁は49歳、イングランド銀行総裁のマーク・カーニーは52歳である。

 そうはいっても、中央銀行の主要な業務として、金利の正常化(引き上げ)も重要だ。その面から、退任したフィッシャー(73歳)の後任副総裁にテイラーを持ってくる可能性が高いと予想している。

 金利の正常化に関しては、FRBの金融市場を担当するニューヨーク連銀が9月に公式に発表を始めた新しい物価指標UIG(Underlying Inflation Gauge)が注目される。CPIに比べて、算出のベースとなる指標が多く(346)、正確度が増していると考えられている。CPIに比べ増加率が高く、上昇基調で2.8%と先進国の物価上昇目標の2%を大きく上回っている。このUIGも最近の思い付きではなく、ニューヨーク連銀が2004年から研究・準備を進めていたものである。

 こうした点から金利の正常化(引き上げ)路線は確実と見られ、その象徴としてもテイラーを副議長に据えることが、金融市場に対してのメッセージとなるだろう。

 日本はG7の先進国の中で唯一、金利の引き上げができない。よく見ると、量的緩和政策のうち、国債などの資産を買い取るペースは鈍化し、年間80兆円から、50兆~60兆円になっている。先日の安倍首相が率いる自民党の勝利により、アベノミクスの強化が進められよう。その中でアベノミクスの中核政策である量的緩和も継続される。主要閣僚が継続されたのを見ても、来年4月8日に切れる黒田総裁(73歳)の任期も、継続される可能性が高い。

(博士[経済学] 宿輪純一)