包括合意を覆す「国民投票」騒動
混迷の度合いを深めるギリシャ危機

 10月下旬以降、ギリシャ情勢が混迷の色を一段と深めており、今のところ解決に向けた道筋が見えない。10月26日の10時間にも及ぶEU首脳会議で包括合意が成立し、金融市場の参加者の多くは「とりあえずギリシャ問題が一服した」と胸を撫でおろした。

 ところが、31日になってギリシャのパパンドレウ首相が、突然「EU(欧州連合)などからの支援について国民投票を行なう」と発表した。国民投票の結果が否決になると、ギリシャは資金繰りに窮し、デフォルトを余儀なくされる。

 しかし、この国民投票に対して最大野党が猛反発。首相に辞任要求を付きつける事態となった。結局10月4日に首相は国民投票を正式に断念し、危機終息に向けた連立政権樹立への模索を行なうことになった。

 国民投票で否決の判断が出れば、ギリシャがユーロ圏から離脱することを意味した。その先に見えてくるのは、ユーロ圏崩壊の構図だ。どう転ぶかわからないギリシャ危機への先行き不安が、今回の国民投票騒動によって増幅され、引き続きユーロ圏に深刻な影を落とし続けている。

 フランス・ドイツなどのユーロ諸国は、今回の国民投票発表に驚き、強く反発した。メリケル・サルコジ両首脳は、ギリシャに対して、「ユーロ圏に留まるつもりがあるか否か」を決めるよう迫った。

 せっかくまとめた合意をひっくり返すような、パパンドレウ首相の発表に強い怒りを感じたのだろう。反発したのは両首脳だけではない。すでにドイツの有力メディアには、「ギリシャを追放すべき」の見出しまで踊っている。

 さらに大きな問題は、ギリシャを巡る混迷が、ユーロ圏さらには世界の経済の下落の引き金になる可能性があることだ。ギリシャの国債がデフォルトに追い込まれると、スペインやイタリア国債の信用力低下にもつながりかねない。

 それが現実味を帯びてくると、それらの国債を保有する金融機関が痛手を受け、大規模な金融システム不安の発生につながることも考えられる。