共産党推薦の前市議が出馬を取り止め
「反橋下戦線」が形成される大阪市長選
11月27日投開票の大阪ダブル選挙に、新たな動きがあった。大阪市長選に共産党推薦で立候補予定だった前市議が4日、出馬の取り止めを表明したのである。「橋下徹氏の当選を阻止するために出馬断念を決意した」と関係者は事情を明かした。
告示(11月13日)直前での出馬断念は2人目で、現職の平松邦夫市長と橋下徹・前大阪府知事の一騎打ちとなりそうだ。共産党は平松氏と政策協定などは結ばないものの、党の支持者らに平松氏への投票を呼びかけるという。
これまで、市長選に独自候補を擁立し続けてきた共産党が今回、党の旗を降ろすことになった。1963年以来なので、48年ぶりである。
さらに、自前の候補を出さないだけではなく、自民や民主と事実上、共闘するというのである。思わぬ展開に驚きの声が広がったが、方針の大転換の理由として「橋下氏の独裁を阻止するため」「大阪市を守るため」「民主主義を守るため」といったことが、切迫感とともに語られた。
こうして現職と前知事による異例の市長選は、地域政党「大阪維新の会」と既成政党の大連合による激突となる。維新への完全包囲網が形成されたといってもよい。
それほどまでに橋下氏と「大阪維新の会」は既成政党に敵視されている。なかには大阪の自治を守るための「反ハシズム(橋下的政治手法)統一戦線」だと鼻息荒くする人もいる。
今回の大阪市長選の特異性は他にもある。というとやや大仰かもしれないが、市の助役(副市長・以下同)出身の候補者が誰1人いない点だ。現職市長と前知事はともに民間出身で、行政職員の経験はない。大阪市において助役出身の候補者ゼロの市長選は、何と1955年以来の歴史的な出来事となる。
自主財源の乏しい地方自治体の悲哀を表す言葉に、「3割自治」というのがある。国から配分される地方交付税や各種補助金に依存せざるを得ず、自治とは名ばかりの実態を揶揄するものだ。