今期は業績が回復しつつある百貨店業界。インバウンド需要が再び高まり、化粧品で活況を呈しているためだ。ただ激戦区である東京・銀座では、こうした波に乗れない店舗も出ており、明暗がはっきりとしてきた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)
東京、大阪の都心にある百貨店には今、再び“爆買い”の波が押し寄せている。とはいえ、2013~15年ごろの状況とはかなり異なる。
中国人客を中心とした、転売目的とみられる宝飾品や家電製品の大量買いは影を潜め、年明け以降、高級化粧品にシフトして再び活況を呈しているのだ。
東京におけるインバウンド消費の激戦区はもちろん、銀座である。ただここでは、百貨店の立地や戦略の違いもあり、店舗間でくっきり明暗が分かれている。
“勝ち組”とされるのは、老舗である松屋銀座本店と三越銀座店(図参照)。もともと外国人観光客からの認知度が高く、地下鉄の駅に直結しているのも強みだ。
化粧品については、「中国人のお客さまも今年に入って以降、日本人と同じ接客を求める傾向が出てきた」(三越銀座店の宍戸賢太郎・化粧品バイヤー)。以前は気に入った商品を大量買いしていたが、今では、美容部員によるカウンセリングや肌質のチェックを受け、自分に合った商品を丁寧に買い求めるようになった。両店ともこうした接客を可能にする通訳や、中国語を話せる美容部員も当然配置している。美白や美肌効果をうたう資生堂、コーセー、アルビオンやSK-2の商品が特に人気だ。
もっとも、これらの化粧品は日本の消費者の間でも、ここ数年人気を博している。百貨店の販売現場では、「ここ5年間、化粧品の売り上げは日本人客を中心に増加傾向が続いてきた」(松屋の寺本知香・バイヤー)。そこへ、年明けごろから、より質の高い商品と接客を求める中国人客がなだれ込んできたというわけだ。