アウェーバスツアーは、移動中や観戦中の盛り上がりだけでなく、ツアー後にサポーター同士の親交が深まるという効果ももたらした。一緒に旅をすると友情が芽生える。これは誰もが経験することであろう。とくに、「遠く離れた街で、同じチームを応援する」となると、一体感が芽生えるのも当然である。そこで生まれたサポーターの輪がホームスタジアムの長居でさらに広がっていく。このような輪をつないでいく手伝いをするのが、我々スタッフの仕事だ。
というとずいぶんお行儀よく聞こえるが、実際のところ私の「お手伝い」はかなりワイルドなものであった。柏レイソルとの試合を見に行ったときは、試合後、急遽全員を柏市内の温泉に連れて行った。余りの暑さに汗だくになったからだ。突然何十人もの汗びっしょりの大阪人が現れたのだから、温泉の人もびっくりしたことだろう。
黒字転換を見届けて、セレッソを去る
社長となって4年目の2004年。私はセレッソから去ることにした。周囲は驚いたが、私にとってはごく自然な判断だった。
赤字経営だったセレッソは黒字に転換した。チームは長居の街に根を下ろし、市民の方々に愛されている。「黒字転換」「地域密着」という二つの使命が達成できたところで、私の役割は終わったと感じた。
こうして私は再びに日本ハムに戻った。新しいポストは「本社スポーツマーケティング担当部長」。戻ってからもスポーツビジネスの仕事を続けたい、という希望を通してもらえた結果である。
セレッソにいた7年間に培ったノウハウは山ほどある。それを生かして、社の中に新たなスポーツマネジメント専門の組織を立ち上げようと計画していた。とはいっても構想はまだまだ漠然としたものだった。これからゆっくり考えていけばいい、と思いつつ、1年間はヨーロッパを視察したりして過ごす――はずであった。
ところが1年もたたない間に、私は新たな仕事を託されることになった。内容はまたしても、地域密着。しかも今度は、大阪ではなかった。
(本連載は、藤井純一著『日本一のチームをつくる』から抜粋、改稿したものです。)
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プロ野球とJリーグの両方で社長を務めるという稀有な経験の持ち主、藤井純一。セレッソ大阪、そして北海道日本ハムファイターズで人気低迷から来る大幅な赤字を「地域密着」というコンセプトで黒字転換させた彼は、いかにして地域密着を成し遂げたのか? スポーツで街を元気にする、経験に裏打ちされた成功哲学。
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