プロ野球とJリーグの両方で社長を務めた初めての男、藤井純一氏による集中連載。第2回は、ファイターズへも継承されていくセレッソ時代のサポーターとの向き合い方を、エピソードを交えて紹介する。
サポーターとのつながりを深める
アドバイザリー契約を結んだドイツのバイエルン・ミュンヘンから学んだこと(第1回記事参照)に、我々自身のアイデアと戦略をミックスした形が奏功し始め、セレッソ大阪のファン、つまりサッカーで言うところのサポーターは日増しに増加した。このサポーターこそがクラブ運営のなかでももっとも重要な存在であることは間違いない。しかし、さらに重要なのは「サポーターであり続けてもらうこと」だ。
そのためのひとつの策として、二カ月に一回「サポーターズミーティング」を開いたのは、画期的な試みだった。二カ月に一回というのはかなりの頻度である。これはサポーターと我々とのコミュニケーションを深めるための、定期的な話し合いの場だった。
その場で、第一に心がけたのは情報の公開である。チームや選手についての情報はもちろん、経営をめぐる情報もつぶさに話した。サポーターからの疑問にもできうる限りきちんと答えた。
第二の心がけは、懇切で素早い対応。サポーターたちの要望はとことん聞き、できることはすぐに実行した。「応援ボードを作ってほしい」と言われたら、翌日には完成品を手元に届けた。
そして第三に、サポーター同士の関係を円満なものにするよう、心を配ることが不可欠だった。数が増えてくるにつれ、サポーター間にも様々な関係性が生まれる。ときにはちょっとしたことで揉めたりすることも出てくる。サポーターズミーティングは、そうした問題を解決する場でもあった。
サポーター間のトラブルという点では、こんなこともあった。ある試合中、観客同士で突発的な喧嘩沙汰が起こった。その仲裁に、現役を引退したばかりでユースチームのコーチをしていた元選手を駆り出したのである。すると、これがピタリとおさまる。彼が割って入ると、「うわあ、なんで!?」と客もびっくり。喧嘩どころではなくなるというわけだ。ファンサービスとは言えないが、ある意味サポーターにクラブとの距離の近さを感じてもらえたのではないかと思う。