「勝ちぐせ」を身につける方法と条件

 彼らが初めて「チャンスを見分ける独特の感覚」を感じたのは、決まって激務のさなかでした。

 ある営業マンが、期末に向けた最繁忙期に、通常の時期の3倍近くの案件を抱えて、同時にいくつもの重要な商談を進めていたときのことでした。

 体力的にも能力的にも「もう限界だ!」と感じながらも、休むわけにいきません。そんなとき、ある瞬間に「自分の中で初めての感覚」を感じたと言います。それは、非常にかすかな感覚で、その根拠は理屈では説明できないもの。その直感に似た感覚に従っていくと、不思議なほど商談が好条件でスピーディに進んでいったのだそうです。

 あるクリエイターは、同時に複数のクライアントから重要な企画案件を依頼されて、連日の徹夜を押して企画を考え続けていた時のことでした。

 突然、今までに感じたことのない珍しい「ニオイ」が漂ってきたのだそうです。それは、周囲の同僚の誰にも気づかない、彼だけの感覚。初めは、忙しさのあまりに体調がおかしくなったのかと思ったそうですが、以後、その「ニオイ」を感じるときは、ほぼ間違いなく仕事が予想以上に順調に進むということでした。

 他にも、「勝ちぐせ」のついている「ハイパフォーマー」何人にもインタビューを重ねていますが、だいたい似たような状況を経験して、それ以降、「自分にだけわかる独特な感覚」が身についていったようです。

 これが、彼らが言う「一段階レベルアップした瞬間」、「次のステージに進化した瞬間」の正体です。このような経験が、彼らを「ハイパフォーマー」と呼ばれる優秀な人材に育て、次々にチャンスを引き寄せ、「勝ちぐせ」のある人に成長させた秘密だったのです。