第7感は「わかった!」という確信を生む

 これが第6感の力だ。しかし、第6感がまったく機能せず、間違った判断につながる場合もある。本人は「同じような状況を体験したことがある」と思っているのに、実際にはそうではないケースだ。

 ダニエル・カーネマンは『ファスト&スロー』(早川書房)のなかで、そうした状況ではその道の専門家でさえ早計な結論に飛びついてしまうことを、豊富な例を用いて解き明かしている。何かに熟達した人たちは、ある状況ではむしろ第6感によって失敗してしまいやすくなる。実際には初めて体験することであるにもかかわらず、その一部を見て、なじみのあることだと判断してしまうためだ。これは、誰にでも身に覚えがあるはずだ。

 直感が効果的なのは、過去によく似た状況に遭遇したことがある場合のみだ。新しい状況では、第6感はうまく機能しない。新しい状況では、新しいアイデアが必要だ。第6感からは、新しいアイデアは得られない。直感が役立つのは、同じアイデアを、素早く、スムーズに繰り返す場合だ。

 しかし、新しい状況で求められるのは同じアイデアではない。それまでとは違う何かがなければならない。

 そこで必要になるのが、第7感だ。

 第7感は、新たなアイデアを生みだす脳のメカニズムだ。それは、これまで誰も思いつかなかったような突然のひらめきや、「そうか、わかった!」という感覚を生む。新しく、かつ便利なアイデアを生みだすのは第7感だ。実際、社会は第7感がもたらすアイデアによって進化してきた。

人生に変化をもたらす「斬新な考え」

 ときに新しいアイデアは、世の中に大きな変化をもたらす。しかしそのほとんどは、たった一人の日常を変えるだけだ。

 それは世間を驚かすことも、歴史に記録されることもない。だが、そのアイデアを思いついた人の生活や仕事の問題を一気に解決してくれる。

 そのようなアイデアは、星の数ほどある。家族や恋人との人間関係に問題が生じたとき、仕事で行き詰まったとき、私たちには新しいアイデアが必要になる。そんなとき、第7感が大きな力を発揮するのだ。

 そうした個人的な仕事や日常生活における創造的なアイデアには、個人の目標達成や人生全般において、電球やパーソナルコンピュータのような偉大なイノベーションと同じくらい重要な価値がある。そして、それらのアイデアはどちらもまったく同じメカニズムで私たちの脳内で起こる。そう、それらはすべて第7感から生じるのだ。

 しかしご想像の通り、ひらめきはその性質上、完全にコントロールすることはできない。それは、チューブから歯磨き粉を絞り出すようにして脳の外に押し出せるものではないのだ。ひらめきは、予告もなく突然に現れる。

 とはいえ、ご心配なく。第7感を得やすくしたり、「わかった!」という瞬間が起こる可能性を上げたりすることは十分にできる。本書ではこれから、そのことを詳しく説明していく。