創業メンバーは
3人がベスト
2つ目の解決策は(2)「ゴールでつながる」ことだ。同じ価値観でつながっている仲間であっても、事業の考えかたに違いが生じたときに、なかなか落とし所を見つけづらい。特に2人の場合は間に入る人がいないのでなおさらである。
そんなときでも、ゴールややるべきことが明確にある場合は、その解決・遂行のためにどうすればよいのか、という観点から着地点を決められる場合も多い。やることを明確にして、議論が平行線にならないようにするのだ。そういった意味では、弁護士事務所などはやることが明確で2人の創業者でもうまく運営されやすい。
最後に3人のコアメンバーで創業した場合だ。私はこのパターンが一番好ましいと思っている。創業期は、やることが多い割にチームメンバーの数が少ない。そんなときにコアとなって動く人間が3名いるというのは単純に労働力の観点からみて好ましい。そして2人創業のメリットである役割分担も一層しやすくなる。
コアメンバーである以上、全員が当事者意識を持って取り組むことは当然であるが、1人に強いリーダーシップがあるとなおよい。ほかの2名も代表になれるタイプでありながら、1人が非常に強いオーナーシップを持っている場合、事業の推進速度や成功確度は格段に高くなる。
ただし注意しなければならないのは、3人で意見が割れ、2人と1人で派閥のようになってしまうケースだ。こういった場合や、1人がほかの2人と比べて成果を出せない場合などは、1人が去っていくことになる。
なお、第7回で述べた株式の持ちかたは、こういった事態も想定している。1人に株式を集中させることで、創業期にありがちなメンバー間の対立が、事業の崩壊につながらないように設計されている。
今回は、創業期のコアメンバーに求められる能力やチームメンバー数ごとのメリット・デメリットを説明した。次回はこのコアメンバーを集めるために必要なポイントについて説明する。いくら理想のメンバー数を決めても、メンバーを口説き落とせなければ絵に描いたモチでしかない。どのような点に留意すれば、魅力的な人材を仲間に引き入れられるのかを説明する。
山口揚平(やまぐち・ようへい)
早稲田大学政治経済学部(小野梓奨学生)・東京大学大学院修士。1999年より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと、独立・起業。企業の実態を可視化するサイト「シェアーズ」を運営し、証券会社や個人投資家に情報を提供する。2010年に同事業を売却したが、のちに再興。クリスピー・クリーム・ドーナツの日本参入、ECプラットフォームの立ち上げ(のちにDeNA社が買収)、宇宙開発事業、電気自動車(EV)事業の創業、投資および資金調達にかかわる。その他、Gift(ギフト:贈与)経済システムの創業・運営、劇団経営、世界遺産都市ホイアンでの8店舗創業(雑貨・レストラン)、海外ビジネス研修プログラム事業、日本漢方茶事業、医療メディア事業、アーティスト支援等、複数の事業、会社を運営するかたわら、執筆、講演活動を行っている。専門は貨幣論、情報化社会論。 NHK「ニッポンのジレンマ」論客として出演。テレビ東京「オープニングベル」、TBS「6時のニュース」、日経CNBC放送、財政再建に関する特命委員会2020年以降の経済財政構想小委員会に出演。慶應義塾高校非常勤講師、横浜市立大学、福井県立大学などで講師をつとめた。著書に、『なぜか日本人が知らなかった新しい株の本』(ランダムハウス講談社)『デューデリジェンスのプロが教える企業分析力養成講座』(日本実業出版社)『世界を変える会社の創り方』(ブルー・マーリン・パートナーズ)『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』(アスキー・メディアワークス)『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』(ダイヤモンド社)『10年後世界が壊れても君が生き残るために今身につけるべきこと』(SBクリエイティブ)などがある。