都市計画の用途地域は、区域ごとに建ててもよい建物、建ててはいけない建物を定めている。その中で準工業地域は、ほとんど何でも建てられる。実際は、都市計画が定められる前に、住工商が混在してしまっていた所が指定されることが多い。

 東京で準工業地域が多いのは、荒川、江東、墨田、大田、品川の各区。これらの区では、面積の3分の1以上を準工業地域が占める。いずれも東京を代表する町工場地帯だ。

住工商の混在地帯を襲う
出火と延焼の「ダブルリスク」

 首都直下地震で想定される品川区の焼失棟数は、1万1000棟。区内の建物の16%に及ぶ。品川区の火災発生要因には、他の区と異なる特徴がある。

 東京消防庁の予測によると、23区全体の震災時の出火原因は、電気関係が59%。ストーブなど火気器具が35%。化学薬品、工業炉、危険物施設など(以下「化学薬品等」と呼ぶ)は6%しかない。だが品川区は、化学薬品等に由来する火災が18%と、23区で一番高い。

品川区――出火と延焼のダブルリスクから区民を助ける「見守り、見守られる」関係づくり

 加えて品川区は、6時間後の延焼危険度が23区平均の1.6倍に上る。不燃化率12位、平均道路幅員8位、幅員13m以上の道路延長比率6位など、延焼遮断の都市構造の評価は決して低くない。

 にもかかわらず延焼リスクが高いのは、出火危険エリアと、木造の建物が狭い道路に沿って密集する延焼危険エリアが、重なっているからである。

 東京都が発表している火災危険度を地図に落としてみると、一目瞭然だ。危険度4以上のエリアは、西南部にかたまっている。というか、区の西南部は、そのほとんどが火災危険度4以上に塗りつぶされている。区の区分に従えば、荏原地区だ。東急3線の沿線一帯といえば、もっとわかりやすいだろう。