今週の米/ドル円は、77円前後で底堅い感じが出てきました。その中で、少し米ドルが上値をトライしそうな兆しすら出てきました。このおもな米ドル買いは、日本の銀行の米ドル資金調達の動きではないでしょうか。
対円にも波及し始めた
「有事のドル高」
「資料1」は、欧州の銀行の米ドル資金調達コストを示すグラフです。
これを見ると、欧州の銀行では、最近にかけて米ドル資金の調達コストが2008年の秋から2009年の春にかけて展開した「100年に一度の危機」に近いところまで悪化してきたことがわかるでしょう。
このように、米ドル資金の調達が困難になった欧州の銀行では、外為市場で米ドルの調達を増やす動きとなりました。これがユーロ安・ドル高をもたらしてきた一因というわけです。
ところで、そうした米ドル資金の調達難は、これまで日本の銀行には目立っていませんでした。だから、邦銀ではリスク回避局面という「有事」でも米ドル買いが広がらなかったため、全体的な「有事のドル高」の中で、米ドル/円だけは蚊帳の外となっていたわけです。
しかし、ここにきて、邦銀にも米ドル資金調達難が波及し始めてきたようです。このため、邦銀が外為市場で米ドル買いに動くようになったことから、米ドルは対円でも底堅くなってきたということだと思います。
米ドルが一段高へ向かう
可能性は?
では、米ドルは対円で底堅くなっただけでなく、一段高へ向かう可能性はあるのでしょうか? その鍵を握るのは、ヘッジファンドなどの投機筋ではないでしょうか。
「資料2」は、ヘッジファンドなどの取引を反映しているCFTC統計の円ポジションですが、これを見ると、投機筋は円買い越し、つまり米ドル売り・円買いポジションにあると思います。
米ドル資金の調達コストが上昇することで、投機筋が米ドル資金の返済を急ぐなら、米ドル買い、円売りが拡大する可能性はあるでしょう。
また、そんなヘッジファンドが、米ドル買い、米ドル売りの目安にしているとされる120日移動平均線は、足元で77.8円程度まで下がってきました(「資料3」参照)。
米ドル資金調達コストの悪化とともに、この120日移動平均線を米ドルが越えてくるかどうかが、投機筋も米ドル買い拡大に向かうかを考える上での焦点ではないでしょうか。
(記事の続きを読む)