翌日、尚美さんは近所のドラッグストアに行った。店内をざっと回ってみたが、薬がなかなか見つからない。

「あのう、口唇ヘルペスの薬はどこですか」

 アルバイトらしい若い男性店員に声をかけると「えっ、ヘルペス!知りませんよ」。失礼にも、店員は、驚いた様子で逃げてしまった。

 (何、あれ)

 今度は、40代ぐらいの薬剤師らしき女性に声をかけると、すぐに教えてくれた。そこで、先ほどの男性店員について話すと「大変申し訳ございません。何か勘違いしたのかもしれません。しっかり教育しておきます」と謝られた。

 しかし、釈然としない。何をどう、勘違いしたのか。

 考えているうちに、「あぁ」と合点がいった。彼は性病のヘルペスである「性器ヘルペス」の薬のありかを聞かれたと思ったのだ。

 (性器ヘルペスじゃないってば。口唇ヘルペスは、皆がなる病気なのよ~)

 尚美さんは独り顔を赤らめた。

「口唇」で済んでいたのは
超ラッキーだったかも

 とはいえ、尚美さん自身も、口唇ヘルペスと性器ヘルペスの違いを知っているわけではなかった。

 なにせ、口唇ヘルペスは少女の頃から付き合いはあるものの、はっきり言って、「どうってことない病気」という認識だった。