今回は、米国の金利が景気不安一巡後の急騰局面に入っているのかということ、そして、EU(欧州連合)の「世紀の取引」成立説などについてもご説明いたします。

今回の米雇用統計の結果は十分に意味がある

 先週末、12月2日(金)に11月分の米国雇用統計が発表されましたが、非農業部門雇用者数(NFP)はほぼ市場予想どおりの前月比12万人の増加となり、失業率は前月比変わらずの9.0%という市場予想に対して、一気に8.6%まで急低下しました。「ポジティブ・サプライズ」の結果です。

 ただ、この結果に対して、発表直後のマーケットでは目立った反応は見られませんでした。引き続き、欧州関連のニュースのほうに市場関係者の関心が向かっているようですが、それについては後でご説明いたします。

 相場への影響は限られましたが、このところの米国の景気指標は、市場予想よりも良い結果であるケースが増えています。

 今回の雇用統計の結果も、景気回復期待を崩すような、いわゆる「ネガテイブサプライズ」とならなかっただけでも、十分に意味があると私は思っています。

ISM指数の大幅上昇は景気回復期待拡大へのシグナル

 この雇用統計の前日、12月1日(木)に発表された11月分のISM製造業景況指数も改善され、10月分の50.8から52.7へと2ポイントほどの大幅上昇となりました。

 ちなみに、この指数が昨年、前月比で2ポイント以上も大きく上昇したのは11月初めで、一昨年、2009年に同じく前月比2ポイント以上も最初に上昇したのは5月初めのことでした。

資料1

 

 そこで「資料1」をご覧ください。今回のように、過去2年間でISM製造業景況指数が最初に前月比2ポイント以上の上昇となったケースを見ると、米国の長期金利(10年債の金利)はその後の3ヵ月程度で1%以上もの大幅上昇となっていたのです。

 その意味では、この指数の前月比2ポイント以上の大幅上昇は、直近2年間で言えば、景気回復期待が高まり始めるシグナルのようになっていたわけです。

 今年の場合も、12月1日(木)に発表された同指数の結果を受けて、景気回復期待が高まり、たとえば、来年3月あたりに米長期金利が3%を超えるなど、その可能性は注目されるところでしょう。

 そして、そうであるならば、今回の雇用統計の結果が、それに水を差すような「ネガテイブサプライズ」とならなかっただけでも、十分に意味があると思っています。

米金利の上昇とともに、米ドル買いが広がる展開か?

 それでは、米国の金利が大幅上昇に向かうとして、為替相場はどうなるのでしょうか?

 ちなみに、ISM製造業景況指数の大幅上昇から景気回復シナリオが始まった昨年11月、一昨年5月のケースでは、米国金利が大幅に上昇した点は同じでしたが、米ドル/円の展開は異なりました。

 昨年11月は米国金利が上昇する中で、米ドル高・円安になるといったわかりやすい展開でしたが、一昨年の5月は米国金利が上昇しても、米ドル高・円安とはなりませんでした。

 今回は、昨年と一昨年、どちらのパターンになるのでしょうか?

資料2

 

 それを占う上で、「資料2」で円のポジションを見ると、今回は昨年11月のケースに近いようです。

 昨年10月は、円は買われ過ぎ、米ドルは売られ過ぎといったポジションにある中で、米国金利が大幅上昇に向かうとともに、米ドルの買い戻しが進んで、米ドル高・円安となりました。

 同様に、最近も円買い・米ドル売りにポジションが傾斜しているようです。したがって、米国金利の上昇とともに、米ドルの買い戻しが広がって、米ドル高・円安へと向かうのではないでしょうか?

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