参院選の結果でドル円・日本株相場は動くのか?米国要因を凌駕する市場インパクトは見いだせないPhoto:PIXTA

参院選に持続的な相場インパクトはあるか。選挙公約にどれほどの実現可能性があるのか。その精査なくして、相場への含意は乏しい。そもそも日本市場においては、米国の金利次第で円相場が動き、その円相場と米国株次第で日本株が動く。その先導役はほぼ外国人であり、他力本願が大きい。参院選の結果が、トランプ大統領下の米国のマクロ事情を凌駕するほど、日本のマクロ情勢を変えられるとは想定しがたい。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)

選挙結果がマクロ要因に
与える変化は限定的

 7月20日の参議院議員選挙について、市場のエコノミストやストラテジストは、その結果が景気や相場に与える影響を分析し、リポートする。しかし、ちまたに出回る政治分析が、投資や相場の助けになるかは、よく吟味した方がよい。

 筆者自身がストラテジストとして経験してきたことだ。お定まりのパターン化された「分析」は、投資への含意として見た場合、実践からかけ離れていることが少なくない。

 日本のドル円、株式相場に対する政治、選挙の影響力をイメージすると分かりやすい。ドル円相場の短中期変動のほとんどは米金利によって説明可能であった。日本の株式相場は、短中期変動の大半を米国株とドル円(すなわち米金利)の変動で説明できた。日本側の事情で動く部分は限られているのが実情だ。

 最近でこそ、米金利に対するドル円、米国株とドル円に対する日本株の連動性は薄れ、チグハグさも目立つ。しかし、これは、相場局面によって、これらの相関が高まるときと、チグハグになるときがあるというサイクル現象として説明されるところが小さくない。

 平時には、主に外国人が景気や金利などファンダメンタルズの方向性に沿って、日本市場に参入し、相場を動かす。しかし、景気や金利の変わり目かもしれないというときには、投機筋が指針とする尺度は一様でなくなる。投機筋以外にも、ヘッジャー、実需筋などさまざまな勢力がそれぞれの指針に基づいて動き出す。

 筆者の視点はシンプルだ。日本の選挙など政治に関わるイベントが、米国の金利や株価が優性の変動要因である日本市場を動かすほど、国内マクロの変化を引き起こせるかだ。それは外国人を動かせるかに尽きる。マクロ条件の変化を評価できなければ、相場インパクトの確率を評価しようもない。

 次ページでは、選挙前に頻出するお決まりの分析のパターンを取り上げ、今回の参議院選挙の結果が国内のマクロ変化を起こせるのかを検証する。