東京都の防災まちづくりの基本方針は、「防災生活圏」の形成。幹線道路などに沿って耐火建物を連ねた「延焼遮断帯」を設け、城壁のように街を囲むという考えだ。難点は時間がかかること。都がこの方針を定めてからすでに30年。それでも、まだまだ道半ばにある。

リッチな街にもあった「震災リスク」
出火危険度は低いが被害が拡大しやすい

 1世帯当たりの住宅の広さ3位、一戸建てに限れば2位、ネット建ぺい率(宅地面積に対する建築面積の割合)は最低。住宅が広く、かつ建物の敷地にゆとりがある世田谷区は、リッチな街だ。こうした街では火事も起きにくい。東京消防庁が予測する震災時の出火危険度は、練馬区に次ぐ低さを誇る。

 普段の火事も、面積当たりの発生件数はやはり練馬区に次いで低い。ところが、火災100件当たりの死傷者数は4位、全焼棟数の割合は3位と、被害のリスクが高くなる。

 不燃化率19位、加えて平均道路幅員19位、幅員5.5m未満の道路延長比率3位と狭い道が多いから、火が回りやすい上に、消防車が来て消火活動が始まるまでに時間がかかる。

 首都直下地震が起きたら、それだけでは済まない。延焼を遮断するものが少なく、火は一気に燃え広がる。想定される焼失棟数は約3万棟、区内の建物の2割近くに及ぶ。心に油断があると、惨事は一層拡大しかねない。

 建物全壊の想定数は4000棟弱。都の予測では、建物倒壊危険度4以上のエリアは存在しない。だが、区が独自に作成した『危険度マップ』を見ると、多摩川沿いなど区の南部には、建物全壊想定比率が10%を超える危険エリアが少なくない。これも油断は厳禁である。