アクティビストが突く事業・財務・ガバナンスの盲点、上場ファミリービジネスで平時に備えるべき実践ポイントは写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

アクティビストの指摘例

 上場ファミリービジネスにおいては、前回紹介したとおり、特に関連当事者取引や役員の指名、報酬等の決定といった場面で、ファミリーと一般株主との間で利害の対立が生じやすい。アクティビストがこれらを争点に上場ファミリービジネスを標的とするケースも増加している。今回は、上場ファミリービジネスに対するアクティビストの指摘事項を概観し、その対応について整理する。

 一般に株主アクティビズム対応を検討する際には「事業」「財務」「ガバナンス」の観点で整理するが、ファミリービジネスの特徴を踏まえると、それぞれ次のような点に留意が必要である。

 事業面では、経営に関わるファミリーの「思い」が優先される場合があり、資本市場の目線では経済合理性を欠くような意思決定が行われているとしばしば指摘される。

 ある上場企業A社では、アクティビストから「創業家会長の強い思いによって、本業とのシナジーが乏しい事業を展開している」と指摘された。

 財務面では、リスクを取った成長よりも、事業の維持や継続が重視される場合があり、リスクへの備えとして必要以上に余剰資産を保有していると指摘されることがある。これには、過去の好不況を乗り越えてきた経験や、事業を次世代へ引き継ぐことを重視するファミリービジネスの価値観が影響していると推察される。

 B社では「潤沢なキャッシュに加え、資本コストを下回るリターンしか得られない余剰資産を保有することで、資本効率の低下を招いている」と指摘を受けた。

 ガバナンス面では、ファミリーがあたかも当該企業の所有者であるかのように振る舞い、一般株主の利益よりもファミリーの利益を優先していると指摘されることがある。

 C社では「創業家社長が従業員を私用に従事させていることや、会社所有不動産を創業家親族に安価で売却していること」が問題視された。関連当事者取引は、アクティビストの指摘対象となりやすく、株主総会前の公開キャンペーンによってセンセーショナルに取り扱われる傾向もある。可能な限り回避することが望ましいだろう。