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フェイクニュースの次は
「フェイクコメント」合戦が勃発

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第442回】 2017年12月13日
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またしてもロシアの関与が
取り沙汰されている

 FCCには最終的に約2200万件のパブリックコメントが送られたのだが、ニューヨーク州のエリック・シュナイダーマン法務長官が調査したところによると、そのうち100万件以上が、他人の名前を盗んでなりすましで投稿したフェイクコメントだという。

 FCCにパブリックコメントを送信する際には、身分証明は不要で、また同じコンピュータから複数のコメントを送ることも禁止されていない。ネット利用を調査するNPOのピュー・リサーチセンターは、FCCに寄せられたコメントの57%は、即席に取得されたメールアドレスや同じメールアドレスから複数送られたものだとしている。そうすると、フェイクコメントの率は「半数以上」ということになる。

 フェイクコメントについては色々な数字が出ていて、通信業界団体のブロードバンド・フォー・アメリカによる調査は、800万件がフェイクである可能性があるとしている。この調査では、同じ文章が使い回しされているかどうかも調べており、それによると、同じ文章が使われていないコメント、つまり一つずつ書いたものと見られるコメントの大部分に当たる152万件のコメントは、現行の中立性規則を支持するものだったという。反対に、規制撤廃を推進するコメントで実際に1つずつ書かれたと思われるのが、2万3000件。2つ合わせても、まともな投稿は全体の10%しかない。

 そして、今回もロシアが絡んでいる。FCCの委員の1人で、民主党派のジェシカ・ローゼンウォーセルによると、50万件近いコメントが、ロシアのメールアドレスから送信されている。大統領選中も、ロシアやマセドニアなど外国から発信されたフェイクニュースがアメリカ国民を混乱させたのだが、今回も同様のことが起こっていると見られる。フェイクコメントは、撤廃賛成、反対いずれの側からも投稿されているのだが、明らかに撤廃賛成派のものが多そうだ。

シュナイダーマン法務長官のサイトにある、自分の名前を騙った偽の投稿がないかを調べる検索ページ
https://ag.ny.gov/fakecomments

 ニューヨーク州のシュナイダーマン法務長官のホームページでは、自分の名前が無許可で使われていないかを検索するツールまで提供している。これまで、投稿をした覚えがないのに名前が使用されているという申し立てが約3000件あり、すでに死亡している人物の名前を騙ったものもあるという。

 FCCのパブリックコメントサイトは、DDoSやスパムボットの攻撃で、サイトがダウンしたこともあった。フェイクコメントはこれに加えて、漏洩したデータから他人の名前を用いてボットが自動生成しているものも多い。広く国民が発言するために設けられた環境が、その脆弱さをまともに突かれていると言える。

 こうした状況下、シュナイダーマン法務長官や民主党議員が、実態を調査するために、来週の投票を延期するよう要請している。だが、パイ委員長は意にも介さない態度を貫いている。
政治対立にフェイクが絡み、ここでもまた火花が散っている。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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