意図分析は空想から
よく検討されたものまで幅広い

上田 一方、意図分析は不可視的なものを明らかにするわけで、能力分析よりも難しいのですが、逆に自由な発想で考えられます。つまり、インフォメーションがなくても、常識的、妥当性という尺度、悪くいくえば空想や当て推量でも、ものが言えます。だから、意図分析は、情報組織などによってよく検討されたものから、評論家個人による直観的なものまで幅広くあります。

 著名な評論家が、テレビで「北朝鮮の指導者のミサイル発射の意図」や「中国の習近平政権の対日政策の意図」について意見を言います。どこまで精査されたものかは分かりませんが、それなりに説得力があるのも事実です。

 しかし、意図の推察はよく失敗します。誤った推察による挑発的な発言は賢明ではありません。 

 意図分析には、歴史上さまざまな失敗事例があります。

 スターリンは、第二次世界大戦時に「独ソ不可侵条約を締結しているヒトラーがソ連を侵攻する意図はない」と判断したり、アメリカは「建国後まもない中国が朝鮮半島に参戦する可能性はない」と判断したり、ベトナム戦争では「北爆の効果に期待し、北ベトナムが南ベトナム総攻撃を仕掛けることはない」と判断しました。いずれも意図判断に執着して情勢判断を失敗した事例です。

秋山 前編でお話に出た単純化の誘惑に抗するとともに、安易な意図分析による決めつけは慎まなければならないわけですね。

上田 だから、まずは能力をしっかりと分析することが重要になります。

 特に、最近はテロ集団から狙われる危険性が高まっています。テロ組織の意図はなかなか見えません。そこでに、何をしようとしているのでなく、テロ組織は何ができるのかを考えることがより重要になっているわけです。

 ここで能力分析を行えば、敵がとりうる行動をいくつも挙げられますが、これに対して逐一対応策を講じているときりがありません。