今回から3回にわたり、2012年の為替相場を展望してみたいと思います。第1回目の今回は、米ドル/円の年間展望の前編です。
最初に結論を申し上げると、私は、2012年は新たな円安・米ドル高が始まる年となり、「ドル高元年」になると考えています。そして、キーワードは「バーナンキのひょう変」だと思っています。
円安・米ドル高は
いつ終わってもおかしくない
今回の円高・米ドル安は2007年6月の124円から始まったので、すでに4年半も続いています。
過去20年あまりについて調べてみると、円高・米ドル安基調となったことは3回ありましたが、その平均持続期間は3年1カ月で、最長は5年でした。その意味では、今回の円高はすでに平均を大きく上回るものになっています。
また、今回の円高では75円台を記録していますが、124円からの米ドルの下落率を計算すると約40%にも達したことになります。
ちなみに、過去3回の円高・米ドル安基調においての米ドルの下落率は、平均で35%、最大は50%となっていました。
このように、今回の円高・米ドル安は、持続期間、米ドルの下落率ともに、過去の平均を大きく上回っているわけです。その意味では、いつ終わってもおかしくないし、過去最大の円高・米ドル安の記録に並ぶとしても、2012年半ばで終わる計算になります。
以上から、2012年は、新たな米ドル高・円安基調が広がっていく年になる可能性が高いと言えるでしょう。
米利上げには、
日米政策金利差ドル優位の拡大が必要
ただ、このようにご説明しても、新たな円安・米ドル高が始まっていくと、なかなかイメージできないという方は少なくないかもしれません。
そして、その最大の理由は、米国の景気が大きく回復して利上げができる状況が、この2012年中に実現するとは思えないということでしょう。
確かに、円売り・米ドル買いが継続的に、かつ、本格的に拡大する上では、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げは不可欠の要素であるようです。
「資料2」は、日米の政策金利差と円のポジションのグラフを重ねたものですが、これを見ると、円売り・米ドル買いが継続的かつ本格的に拡大するためには、日米政策金利差ドル優位が大幅に拡大することが必要だということがわかります。
これに対して、FOMC(米連邦公開市場委員会)は、2013年半ばまで、現行の超低金利政策を続けると述べています。つまり、基本的には、2012年中の利上げはないと言っていることになります。
したがって、2012年中に新たな円安・米ドル高基調が始まることに対し、懐疑的に思う方が多くいらっしゃるのも当然だと思います。
本当にそうなのでしょうか?
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