オリンパスの巨額損失隠蔽事件は2011年の大きな経済ニュースの一つだが、投資家の立場でこの事件の教訓をまとめてみたい。

 最大の教訓は「事件はチャンス(かもしれない)!」ということだ。本件にかかわる経済倫理や制度論も重要だが、投資家が今後の教訓とすべき重要な事実はオリンパスの株価の推移だろう。

 事件が本格的に問題化する以前の10月上旬、オリンパスの株価は2400円近辺だった。ところが、問題が発覚し、上場廃止が懸念されるに及んで同社の株価は急落し、11月11日には最安値424円を付けた。しかし、その後オリンパスに対する企業買収の可能性や、これに絡む証券会社やファンドの株集めが取り沙汰されるようになって株価は持ち直し、12月12日の終値は1300円まで戻った。

「ダイヤモンド・オンライン」の11月9日付の拙稿「『オリンパス』をどうしたらいいのか」などでもおわかりいただけると思うが、事の善悪とは別に、元ファンドマネジャーとして筆者はオリンパスの急落した株価と株式の行方が気になって仕方がなかった。

 一般に、なんらかの「事件」が起きると、たとえば上場廃止を恐れたパニック的な売りのように、投資価値の判断とは関係ない売買が株価を過剰に動かす可能性がある。これは、その企業のビジネスを分析して投資価値について見当をつけたうえでだが、大きな投資のチャンスになる可能性がある。

 あえていえば、企業の不祥事や事故のようなネガティブなニュースは、新製品の発表のようなポジティブなニュースよりも、わかりやすいチャンスを提供してくれる場合が多い。投資家としては、事の善悪とは別に、企業の投資価値と現在の株価との差に対しては敏感でありたい。不謹慎とお叱りを受けるかもしれないが、「投資家の立場で」今回の教訓を考えるなら、これが断然トップに来る。