大阪府内で「すべての土木・建設工事がストップする」という異常事態が間近に迫っている。府内で営業する生コン業者・輸送業者が全面ストライキに突入しているからだ。

  すでに製造を担う生コン製造業者約90社が、7月5日までに無期限の出荷停止を宣言。工場の操業をストップさせた。これは、大阪府内の全生コン業者の7割に相当する数字だ。

 さらに12日からは、生コンをミキサー車で工事現場に搬送する主要圧送業者のほぼ全社にあたる約60社までもが全面ストライキに入ると宣言した。このまま事態の打開が図られなければ、事実上、大阪府内の現場ではほとんどの工事が止まることになる。

 そもそもの理由は、生コン業界の窮状にある。生コン製造業者は、メーカーからセメントを買い、水や骨材などと混ぜ合わせて生コンを製造。それを商社などを通してゼネコンに販売する。そのほとんどが中小零細企業で、地域ごとに組織された共同組合を通じて仕事の受注および生コンの販売を行う。各地の共同組合は、組合員への仕事の分担およびゼネコンへの販売価格の交渉を担っている。

 ところが、最近生コン業者は「原価割れで生コンを出荷することを余儀なくされてきた」(連帯ユニオン関西地区生コン支部・高英男副執行委員長)という。例えば、大阪広域生コン共同組合の場合、組合員の生コン原料の購入価格は1立方メートルあたり1万4800円。これは、14年前と比較すると500円上がっている。ところが、販売価格は「ひどい時には1万円を切る価格で取引されている。このままでは大阪府内で生コン会社が大量に倒産する。存続をかけて最後の戦いに踏み切らざるをえなかった」(同)という。

 生コン産労・全港湾・連帯ユニオンなどの各関連労働組合は、ゼネコンとの価格交渉を行う生コン共同組合に対し、生コン業者が営業を存続できる1万8000円の納入価格を実現するよう要求。交渉が進展するまで無期限ストを行うと通告した。 

 労働組合の通告を受け、現在、生コン商社、生コン協同組合、ゼネコン間での交渉が続いている。

 国内の建設投資が冷え込むなか、建設資材費の圧縮要求は年々強まっている。その末端に位置する生コン業界がついに翻した“反旗”ともいえる。「大阪で大規模工事を抱える大手ゼネコンの影響は免れない」(ゼネコン業界幹部)。市場縮小の痛みを下請けに回し続けたツケがついに回ってきた。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)