第16循環の経済成長率の特徴は、民間最終消費支出の寄与が見られないことです。これは、実質賃金の低下に伴うもので、他の景気循環と比べて経済成長率が鈍化した最大の原因と言えます。

 また、過去と比べても低い経済成長率のもとで、民間企業設備や純輸出の寄与率は相対的に大きくなっています。

 実質賃金が低下し、消費支出の増加が見られない分、景気は、消費以外の需要項目に頼らざるを得ませんでした。

 異次元緩和は円安誘導によって輸出を促進し、日本の株価の割安感を生み出すことで、株式市場も活況を呈しています。実質賃金の低下や株価の上昇は企業収益を改善させ、設備投資の増加にも寄与することになったのです。

 設備投資や輸出といった需要項目の増加は、短期的には、経済成長率と景気の維持に貢献していることは認めなくてはなりません。

 しかし、設備投資や輸出主導の経済成長が、現代日本社会においてふさわしいものか、また、持続可能なものであるかは、疑わしいものがあります。

設備投資主導は過剰供給生む危険
賃金抑制は間違った選択

 賃金抑制は、それぞれの企業の労使関係において様々な亀裂を生むばかりでなく、国民経済的な見地からも大きな問題を引き起こすことになります。

 そのことを設備投資の長期趨勢から説明しましょう(図3 戦後日本経済と設備投資の推移)。

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資料出所:内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算」
(注)
(1)実線の数値は民間企業設備(名目)の四半期季節調整系列である。
(2)前半の点線はバブル崩壊前(1991年第I四半期以前)の傾向線を最小二乗法を用いて推計したもの。
(3)後半の点線はバブル崩壊以降(1991年第I四半期以降)の傾向線を最小二乗法を用いて推計したもの。