リーダーは「意思」を貫徹しなければならない
私はブリヂストンの家入昭元社長の下で、その厳しさを痛感しました。
彼は、社内外の反対を押し切って、多大なリスクを背負いながら、ファイアストンの買収に踏み切りました(詳しくは連載第16回)が、その後、予想どおり無数の問題が噴出。当初は察知できなかった問題が明らかになったり、アメリカを代表する名門企業であるプライドとのぶつかり合いが激化したり、次々とトラブルに見舞われたのです。
そのたびに、「それみたことか」「だから、俺は反対したんだ」といった声が社内外から家入さんのもとには届けられました。「剛」の人物であった家入さんは、顔色ひとつ変えませんでしたが、内心ではどれほどの葛藤があったことか。しかし、彼は一切ぶれませんでした。何がなんでもやり抜くという姿勢が1ミリたりともぶれることはなかったのです。
これは、社長直下のスタッフだった私にとっては、過酷な状況でもありました。
社内外の反対を抑え、ファイアストンの執行部との協調をはかるために、水面下で駆けずり回る必要があったからです。トラブルの真っ只中ですから、一つひとつの交渉も厳しい。面罵されるような局面すらありました。
もちろん、家入さんに泣きつくこともできません。家入さんの意思は石のごとく固いのです。その意思を貫徹するために、ありとあらゆる努力をするほかない。それが、私の置かれた立場だったのです。このとき、私は、優れたリーダーの「厳しさ」を学ばせていただいたのです。