2012年は、アメリカ、ロシア、フランス、韓国で大統領選挙が行われ、中国は胡錦濤体制から習近平体制に変わるなど、過去に例がないほど世界の主要国で続々とリーダーが交代する可能性がある。では、各国が「国内政治の年」に突入することによって、国際政治にどのような影響を与えることになるのか。国際政治学の第一人者である東京大学法学部政治学研究科・藤原帰一教授に、2回にわたってその行方を聞く。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原 英次郎、林恭子)

2012年は“内向の時代”に突入
選挙によって世界の求心力は低下する

――2012年は主要国でリーダーが交代する“選挙の年”となる。そうしたなかで各国は、外交政策に対してどのような態度で取り組むことになるのでしょうか。

ふじわら・きいち/東京大学法学部法学政治学研究科教授。1956年生まれ。専門は国際政治、東南アジア政治。東京大学法学部卒業後、同大学院単位取得中退。その間に、フルブライト奨学生として、米国イェール大学大学院に留学。東京大学社会科学研究所助教授などを経て、99年より現職。著書に『平和のリアリズム』(岩波書店、2005年石橋湛山賞受賞)など。
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 各国とも国内世論に有利な政策を叫び、外交は後回しの“内向の時代”へと突入するだろう。

 そもそも現在、国際体制における各国の協力が唱えられる一方、現実としてその協力は弱まっている。通貨政策の調整面で国際的な連携が弱まり、各国が独自に自国通貨の調整を行っていることからも明らかだ。また、ユーロ危機がその傾向に輪をかけており、通貨の供給量を自国で調整できないために危機に陥ったギリシャやイタリアが反面教師になっている。実際に、日本の円高対策に向けた協調介入がろくに実現していないことからもお分かりだろう。

 現在、このように政策調整が弱まっているのは、経済危機が原因だ。しかし、これが2012年の“選挙第一”の状況と相まって、各国がさらにバラバラになり、その方向性はさらに加速すると思われる。

 したがって現在の世界に共通した傾向は、「分散」と「不確実性」である。いずれ各国の合意による制度形成へと体制は戻るだろうが、2012年はこれまでの制度が揺れ、世界の求心力が弱まる方向へとより動いていくだろう。

予測困難なアメリカ大統領選の行方
オバマ再選は「共和党候補」次第

――2012年は、世界の主要国で大統領選が行われるなど、リーダーが続々と代わる可能性がある。特に注目すべきアメリカの大統領選の行方をどう見ていますか。